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ぼろぼろの体、劣悪な環境で「子供をうむ道具」として扱われる悲惨な繁殖犬の実態

ダ・ヴィンチニュース 7月28日(木)6時30分配信


『子犬工場 いのちが商品にされる場所』(大岳美帆/WAVE出版)

 休日の家族連れでにぎわう
ペットショップ。複合型レジャー施設の
一角やホームセンタターにも
ペットコーナーを併設してあるところが
多いですよね。小さく区切られた透明の
ショーケースには様々な人気犬種の
可愛い子犬たちが並べられています。
子犬たちの愛らしい仕草に、ついつい
足を止めて見入ってしまうことも
多いではないでしょうか。でも、
ショーケースにいるのはいつも小さな
子犬ばかり。この沢山の子犬は
どこからやってきたのでしょうか…。

 その謎が明らかにされたのが
『子犬工場 いのちが商品にされる場所』
(大岳美帆/WAVE出版)です。この本では
劣悪な環境で、ただ子犬をうむだけの
道具として扱われる繁殖犬の実態と
その悲惨さを訴えています。

保護シェルターにいる犬の正体
「子犬が作られる場所」パピーミルとは?

 みなさんは繁殖犬と呼ばれる犬のことを
ご存じでしょうか。繁殖犬とは子犬を
うむために飼われているお母さん犬や
お父さん犬のことです。通常、
犬を繁殖させる際には、犬種ごとの特徴や
性質のほかにも、栄養学、遺伝学など
様々な知識が必要になってきます。
こうした知識にもとづいて計画的に
子犬をうませているのが本来のブリーダーで、
「シリアスブリーダー」と呼ばれています。
子犬をうんで育てている人たちといったら
この「シリアスブリーダー」思い浮かべて
いる人がほとんどではないでしょうか。
でも、この「シリアスブリーダー」の
育てた子犬がペットショップに並ぶことは
まずありえません。
「シリアスブリーダー」は必ず育てた
子犬を大切に扱ってくれそうな方だけに
直接譲るというのです。
ではペットショップにいる子犬たちは
誰が育てているのでしょうか。

 その答えが、工場で商品を大量生産する
ように子犬を大量にうませている
「パピーミル業者」です。「パピー」と
いうのは子犬のことで、「ミル」が工場、
つまり「子犬生産工場」となります。
パピーミルでは人気がある犬種の繁殖犬を
何十頭も飼っていて、特別な知識も愛着も
ないままに、繁殖犬たちに子犬をどんどん
うませています。実は子犬を繁殖するため
には特別な試験も資格も必要なく、役所で
書類を提出するだけで繁殖をはじめられる
のです。そのためただお金儲けのため
だけに犬を繁殖する人が増えてしまった
のです。パピーミル以外にも「大量生産」
はしないものの趣味やお小づかい稼ぎが
目的のブリーダーなどがいます。

 現在、動物保護団体の保護シェルターに
いるほとんどの犬が、こうした繁殖犬で
あるといわれています。目の見えない犬、
耳の聞こえない犬、片足のない犬、
薄汚れて毛が絡みぼろぞうきんのように
みすぼらしい姿の純血腫の犬たちが
そこには多く存在します。いったい
どうしてこのような状態になったの
でしょうか。

劣悪な環境で「子供をうむ道具」として
扱われる悲惨な繁殖犬の生活

 繁殖犬はその多くがそまつな
プレハブ小屋などで多頭飼い
されています。そして狭いケージに
押し込まれたまま、繁殖期がくるたびに
子犬をうむことを強要されます。
パピーミルは何十頭という犬を1人、
もしくは数人で管理することが
多いため、繁殖犬のケージには常に
糞尿が放置され、病気になっても、
けがをしても、治療されることは
まずありません。パピーミルに
必要なのは可愛い子犬であり、
売り物ではない繁殖犬にお金や
手間をかけることはしないのです。
こうしてケージから一歩も出ること
なく死んでしまう繁殖犬が多くいます。

売れ残ったペットショップの
子犬たちも同じ運命をたどることも…

 一方でまだ小さなうちに母親犬と
引き離された子犬たちは生後45日が
過ぎると「ペットオークション」という
市場で競りにかけられます。
移動用の小さなケージや段ボールに
入れられて長時間移動するために、
体が弱り死んでしまうことも多いと
いいます。この本によると2014年度には
市場やペットショップへの移動中だけで
2万3000頭の子犬や子猫が死んでいる
そうです。こうしてなんとか
ペットショップにたどりついた子犬も、
体を大きくしないために必要最低限の
えさしか与えられない状況が続きます。
それでも売れ残ってしまった場合は、
その多くがペットショップを運営して
いる会社やパピーミル、ブリーダーに
繁殖用として売られていきます。
子犬たちもまた、親と同じ運命を
たどる可能性があるのです。

負の連鎖を断ち切るために
必要なこととは?

 現在アメリカのいくつかの都市では、
すでにペットショップで犬や猫を
売ることが禁止されています。これは、
ペットを飼いたいと思う人以上に
パピーミルで生産されるペットの数が
圧倒的に多く、殺処分されるペットの数が
あまりに多かったためです。そして、
殺処分を減らすためには売られる
犬や猫の数を減らせばいいという
結論に達しました。現在生体販売が
禁止されている都市では、
ペットが欲しい人はシリアスブリーダーか
「アニマルシェルター」といわれる
動物保護施設にいきます。

 そしてこの日本でも、現在殺処分される犬、
悲惨 な繁殖犬を生み出さないための活動を
続けている人たちがいます。
この本を読むことで、ペットショップで
売られる可愛い子犬の陰に隠された
繁殖犬の悲劇を、1人でも多くの人に
知ってもらいたいと思います。

文=朝倉志保</