外国人観光客が急増している関西国際空港で、
5月末に新しい検疫探知犬2匹が
デビューした。日本に持ち込めない肉製品や
果物を旅客の手荷物から嗅ぎ分け、
鳥インフルエンザや口蹄(こうてい)疫
といった家畜伝染病、農産物の害虫が
侵入するのを防ぐのが役目。昨年5月から
活躍している先輩犬2匹と一緒に
奮闘している。

手荷物から肉製品を嗅ぎ分けてハンドラーに知らせる
検疫探知犬の「ジャグ」=関西国際空港
新しい探知犬はともに米国で生まれた
3歳のビーグル犬「ボウ」(雄)と
2歳の「ジャグ」(雄)。
1月にハンドラー(指導手)が渡米し、
3月まで一緒に訓練を積んだ。
3月末に来日。空港の環境にならし、
2匹でチームを組んで業務に
当たっている。
取材した日には、シンガポールから
マニラ経由で到着した旅客の手荷物に
ジャグが近づき、くんくんと検査。
客が持っていたサンドイッチに気付き、
その場にちょこんと座ってハンドラーに
知らせた。
対象物は生肉やハム、加工品などの
肉製品のほか、パパイアやマンゴーなどの
果物。中には2匹が嗅ぎなれていない物も
あり、座らなくても気にするしぐさを
見せることがある。その場合は客の協力で
手荷物検査を行い、あらためて嗅ぐことで
匂いを覚える。
ジャグとペアを組む
動物検疫所関西空港支所の小谷啓さん
(30)は「落ち着いていて学習も早い。
探知犬の活動を通して、海外から持ち込めない
食品があることを知ってほしい」と呼び掛けた。
検疫探知犬は米国など広く海外で導入され、
日本の空港では2005年に成田空港に
初めて配備された。関空は08年に取り入れ、
福岡や那覇、新千歳など各地に拡大した。
7空港で20匹が活動している。
利用客を威圧しないよう、全て小型で
かわいらしいビーグル犬を採用。
懸命に仕事をこなす姿に思わずほほ笑む
客もいる。
同支所によると、検疫探知犬による
関空の15年の摘発実績(速報値)は、
4222件、約7トンといずれも
全空港の中で最多。数量は前年から
約1・5倍に増えた。関空はアジア便が
9割を占め、その半分が中国便。
中国から肉まんやギョーザを土産や
自分用に持ち込もうとする例が多いと
いう。
関空所属の探知犬は現在4匹。
本年度中には6匹体制になる予定で、
さらなる摘発増加が見込まれる。
同支所の大友浩幸次長(51)は
「訪日客の増加で伝染病侵入の危険性は
高まっている。検疫探知犬とともに、
検査のさらなる強化を図っていきたい」
と話している。