
犬たちの新たな「家族」を
見つけようと、複数の
ボランティア団体が
参加した譲渡会(3月21日、藤沢市で)
県動物保護センター
(平塚市)に飼育放棄した犬を
安易に持ち込む飼い主が
後を絶たない。
「病気してやっかいだ」など
身勝手な理由が目立ち、
センターの犬の収容数は
常時40~50匹に上る。
この3年、犬の殺処分はゼロだが、
この記録も一時的に犬を引き受け、
新たな飼い主を探す
ボランティアらの努力に
支えられているのが実情だ。
関係者は「放棄ゼロ」を目指し、
本当に犬を大切にできる
人なのかを慎重に確かめながら、
地道な活動を続けている。
藤沢市で3月21日、
複数のボランティア団体が
参加する犬の譲渡会が開かれた。
約15匹を連れてきた
「アニマルプロテクション」
(アニプロ)のブースでは、
犬たちと触れ合う家族らに、
スタッフが犬種の特性、
犬の個性などを丁寧に説明していた。
県内在住者を中心とした
有志グループのアニプロは
2015年度、センターから
123匹の犬を引き取った。
スタッフたちは優しい飼い主を
早く見つけてあげたいと願いつつ、
譲渡には細心の注意を払う。
▽家族全員が飼育に同意
▽譲渡・転売はしない――などの
条件を設けて面接を行い、
「病気になっても生涯向き合う」
といった誓約書を書いてもらう。
「最期まできちんと飼育
できるのか見極めないと、
言葉を話せない犬たちが
犠牲になる」とアニプロ代表の
女性(45)は強調する。
譲渡会でアニプロから成犬を
引き取ることを決めた都内の
自営業男性(60)は
「自分の体力や年齢を踏まえて
(この犬を)みとる決心をした」
と語った。
◇
13年施行の改正動物愛護管理法は
ペットの「終生飼育」を
飼い主の努力義務と明記した。
これに反する場合、自治体が
引き取りを拒否できるようにも
なったが、結局道端に捨てられる
恐れもあり、実際には拒否は難しい。
県のセンターでも15年度、
飼い主が自ら持ち込んだ犬は
95匹を数えた。
「妊娠したのでもう飼えない」
「年を取り、散歩が負担になった」
「引っ越し先がペット不可だった」
「飼ってみたものの鳴き声が
うるさかった」――。
終生飼育の精神は浸透していない。
近年、インターネットの飼い主
仲介サイトも登場し、個人間での
譲渡も増加。新しい飼い主が実際に
犬を見ることもなく譲り受けた結果、
すぐに捨てるなどの問題も多いと、
ボランティアらは指摘する。
三浦市で昨年末に大型犬を
捨てたとして、横須賀市の
女性飲食店員が同法違反容疑で
書類送検された事件でも、
サイトを通じた個人同士のやりとりで
譲渡が行われ、犬は数日後に
遺棄されていた。
センターは
「放棄される犬が減らなければ、
やむを得ず殺処分する可能性はある。
動物を飼う以上、自分の健康や年齢、
家庭環境も含め、責任を持って
大切にできるのか、よく考えて
ほしい」としている。
2016年04月03日 Copyright © The Yomiuri Shimbun