猛毒かけ捕獲、米輸入熱帯魚の7~9割(その2) | トピックス

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ナショナル ジオグラフィック日本版 3月15日(火)7時20分配信

シアン化ナトリウムで魚を捕るのは違法?

 生物多様性センターによれば、
フィリピン、スリランカ、インドネシアは
いずれもシアン漁を禁止しているものの、
法律は実際には効果を発揮しておらず、
依然として広い範囲で行われている。

WWF(世界自然保護基金)は、
フィリピンでは自家用飛行機で
シアン化ナトリウムが漁師に届けられ、
魚がまとめて生け捕りにされると
報告している。

背景にある漁業の現状

 死んだ魚よりも、生け捕りの
魚の方が漁師に入る利益は大きい。

WWFによれば、このため食用魚の
漁から観賞魚の生け捕りに
切り替える漁師が増え続けて
いるという。

観賞用熱帯魚の取引額は、
年間およそ2億ドルに達している。

シアン化ナトリウムをかけられた
魚はどうなるのか

「フォー・ザ・フィッシズ」の
ディレクター、ルネ・アンバーガー氏は、
シアン化ナトリウムへの曝露の
影響を調べた科学調査を紹介した。

その打撃は極めて大きい。

シアン化ナトリウムを
吹きかけられると、魚は
「呼吸がほとんどできなくなり、
次いでバランス感覚を失い、
すべての呼吸活動が完全に失われます」。

曝露の量が多すぎて、
その場で即死する魚もいる。

その後の流通過程で、さらに多くの
魚が死ぬ。残りが、
魚の入手方法を疑わない消費者の
水槽に入るまで持ちこたえるが、
程なく死んでしまう。

なので、市場は売り逃げゲームの
ようになっているという。

魚以外の生物への影響は?

 シアン化ナトリウムによって
死に至らなかった魚も、一時的に
遊泳と呼吸の能力が損なわれる。

加えて、サンゴも被害を受ける。

「インターナショナル・
マリンライフ・アライアンス」
のサム・ママウアグ氏によれば、
フィリピンではシアン化ナトリウムで
魚が1匹生け捕りにされるたびに、
およそ1平方ヤード(約0.84平方メートル)
のサンゴが破壊されるという。

シアン化ナトリウムは少量でも
サンゴの白化を引き起こし、
サンゴを土台とした生態系が揺らぐ。

サンゴが全て死滅することさえある。

 サンゴが一度死んでしまうと、
生態系全体が崩壊する。

サンゴ礁の魚、甲殻類、植物、
その他の生物などは、サンゴ無しでは
餌も隠れ場所も繁殖地も確保できない。

その影響は食物連鎖を通じて波紋を広げ、
人間を含む数多くの種に影響が及ぶ。

生物の生息地としてのサンゴ礁は、
数千万の人々に食料をもたらし
、商業漁業や観光、その他多くの
産業を通じて人々の生計を
助けているのだ。

米国が取れる対策

 米国では、外国の法律に反して
入手された野生生物の輸入は
「レイシー法」で禁じられている。

これに基づき、米国の法執行機関は
シアン漁で捕獲された魚を突き返す
ことが可能だが、生物多様性センターの
ニコラス・ウィップス氏は
「米国のどの機関も、輸入された
観賞魚にシアン化物が含まれて
いないかどうかの検査を行って
いません」という。

今回の要望書は、米国海洋漁業局、
税関・国境警備局、
魚類野生生物局に対し、輸入熱帯魚に
シアン化物の検査を課し、
認証を行うことで、シアン漁で
捕獲された魚を締め出すよう
求めている。

私たちにもできることは?

 環境保護団体は、飼育下で
繁殖された魚だけを買うよう
熱帯魚の愛好家たちに訴えている。

それを示すラベルを付けている
店もあるが、一番いいのは
直接尋ねることだ。

フォー・ザ・フィッシズが
米国ヒューメイン・ソサイエティー、
ヒューメイン・ソサイエティー・
インターナショナル、ソフトウェア会社
エイスリングと協力して開発した
無料アプリ「Tank Watch」を使うと、
自然のサンゴ礁を守りつつ
観賞できる魚種を探すことが
できる。