猛毒かけ捕獲、米輸入熱帯魚の7~9割(その1) | トピックス

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ナショナル ジオグラフィック日本版 3月15日(火)7時20分配信

青酸カリと同類の
シアン化ナトリウムを海に、
環境団体が米政府に抗議

 かかりつけの歯医者、レストラン、
リゾートホテル、そして一般の家庭。

海の熱帯魚の水槽は、いまやありと
あらゆる場所に飾られている。

色鮮やかなサンゴと、それ以上に
鮮やかな魚たちが織り成す平和な
海の世界をリビングにいながらでも
楽しめるようになった。

 だが、そうした熱帯魚がどこから
やって来るか、ご存じだろうか。

海の熱帯魚のうち人工的に
繁殖できない種は98%、つまり
ほぼすべてに上る。

となれば、魚の逃げ場だらけの
サンゴが群生する海のなかで
捕ってくるしかないが、
一体どうやって捕獲するのか。

 ほとんどの場合、
猛毒のシアン化ナトリウムによる。

 シアン化ナトリウムの別名は
青酸ソーダで、青酸カリとほぼ同じ
毒性を持ち、熱帯魚輸出国の上位を
占めるフィリピン、スリランカ、
インドネシアで多くの漁師たちが
使っている。

粉状に砕いてから溶かしたものを
スプレーボトルに詰め、水中で魚に
吹きかける。目当ての魚は動けなくなるため、
簡単に捕まえられる。

当然、周囲のサンゴ礁や他の
海洋生物も全てシアン化ナトリウムを浴びる。

 米海洋大気局(NOAA)と国連によれば、
米国に毎年輸出される熱帯魚
1250万匹のうち、推定70~90%が
シアン化ナトリウムを使った違法な
漁で捕獲されているという。

 3月7日、これらの違法な輸入魚を
取り締まるよう、複数の環境保護団体が
米国政府に要望書を提出した。

要望には非営利団体
「生物多様性センター」、
「ヒューメイン・ソサイエティー」、
そしてハワイに拠点を置く
「フォー・ザ・フィッシズ」が
名を連ねている。

海の熱帯魚はどこから来るのか

 米国で売られる熱帯魚は、
ほぼ例外なく東南アジア、フィジー、
ケニア、ハワイ近海のサンゴ礁で
捕獲される。

人気の魚種の人工繁殖も
試みられているが、適切な方法は
まだ見つかっていない。

取引されている熱帯魚は約1800種に
上り、人工的な育成に成功したのは、
数種のクマノミとハゼなどごく
一部にとどまっている。



フィリピン、パラワン島沖にある
サンゴ礁の割れ目で、
シアン化ナトリウムを使った
違法な方法で魚を獲る漁師。
(PHOTOGRAPH BY JURGEN FREUND, NATURE PICTURE LIBRARY, CORBIS)