2016.3.12 07:00産経ニュースより
東日本大震災で被災し、
行き場を失った犬猫たち約30匹が、
現在も動物保護施設
「ハッピーハウス」(大阪府能勢町)
で暮らしている。
同施設では、これまで被災した
犬猫計213匹を保護。
飼い主の元へ戻れるケースがある一方で、
施設で息を引き取る犬猫も多くなった。
動物たちにとっての5年はあまりにも
長い歳月。
被災した犬猫たちに刻々と過ぎる
時間が重くのしかかる。
(嶋田知加子)
今月5日。福島県南相馬市内の
仮設住宅に住む歯科技工士の
門馬哲明さん(53)は、
新潟市内に住む長女の汐里さん(20)
とハッピーハウスを訪れ、
飼い犬のキャバリア「のんちゃん」
(14歳)と1年ぶりに再会した。
福島県南相馬市小高地区に
自宅のあった門馬さん一家。
東京電力福島第1原発事故による
避難指示で自衛隊のバスで新潟の
避難所へ移り、のんちゃんは
行方不明になっていた。
ハッピーハウスを運営する
公益財団法人「日本アニマルトラスト」は、
震災直後から山形県を拠点に福島を往復し、
犬猫たちを保護し続けていた。
のんちゃんは平成23年5月ごろ、
近所の大型犬と放浪していたところを
発見された。
能勢町の施設へ移されたのんちゃん。
約1年後、汐里さんと祖母の
宣(のぶ)さん(83)が、
新潟の避難所で被災犬を載せた
冊子を見てみつけた。
「奇跡だと思った」と汐里さん。
その年の12月、
一家はハッピーハウスで再会。
最初は戸惑っていたのんちゃん。
これは被災犬の特徴だというが、
宣さんがお気に入りの軍手の
においを嗅がすと、尾を振り始めた。
「(放浪していた2カ月)
どうしてたの…」と、宣さんは涙ぐんだ。
門馬さん一家は今も仮設住宅で暮らし、
のんちゃんを引き取れない状態が
続いている。
現在、飼い主に再会できるケースが
少なくなっている。
保護した被災の犬猫計213匹のうち
飼い主の元に戻れたのは73匹、
里親が見つかったのは68匹にのぼる。
しかし犬13匹、猫27匹が同施設で
生涯を終えた。
現在、施設には被災地から
保護した犬21匹、猫11匹がいる。
飼い主が判明していない犬猫も多く、
「5年もたてば飼い主の判明は
難しいのが現状」と、スタッフの
今村充考さんは言う。
なかでも、犬は高齢化が顕著で
「10歳を超えている犬が7割以上」
と危機感を募らせ、
「人間の5年は、動物たちにとって
もっと長い。
早く飼い主や里親がみつかってほしい」
と訴える。