
[photo from Science News]
獣医療や栄養、
住環境がよくなったことで、
犬の寿命は世界的にのびています。
人と同様に犬も歳をとるとガンなどの
さまざまな病気を発症しやすく
なりますが、そのひとつに脳の加齢による
病気である認知機能障害症候群
(cognitive dysfunction syndrome:CDS)が
あります。
それまで分かっていた周囲の人や
環境を認識できない、徘徊をする、
昼と夜が逆転する、目的もなく
ひたすら吠えるなどといった様々な
変化が見られるようになり、
いわゆる人の認知症とよく似た
症状を示すようになることがあります。
アメリカやヨーロッパでは11~12歳の
犬の28%が、15~16歳の犬の68%が
CDS に罹っていると見積もられている
そうなのですが、すべての犬が加齢により
CDS になるわけではありませんし、
CDS に見られる症状であっても
ほかの神経疾患が原因である場合も
あります。
CDS は早期発見して治療をすると
よりよい予後となる可能性があることから、
スロバキアの獣医大学の研究者らは
CDS の兆候がみられる8~16歳半の
215頭の犬を対象に研究をおこない、
CDS のステージ(一般の老化・軽度・
中程度・重度)を評価する新たなる基準となる
CADES を『Applied Animal Behaviour Science』
に発表しました。
CADES を使った解析によると、
半年の間に症状が一般の老化から
軽度になった犬が42%、軽度から
中程度になった犬が24%いたそうです。
この進行スピードは人の5倍の速さで
あるそうなのですが、それについては
犬の寿命が人のそれよりも短いためであると
研究者らはいっています。また1年を経過すると、
一般の老化から軽度が71.45%、
軽度から中程度が50%、とほぼ倍の割合で
ステージの進行がみられたそうです。
これらの結果より CADES の診断基準が、
CDS の初期段階での診断に有効であることが
示されたとしています。
犬の CDS の症状が進んでくると、
これまで通りには生活が送れなくなり、
最悪のケースでは飼育放棄へとつながる
ことがあります。
また、老犬介護や老犬ホームなどの手を
借りざるを得ないこともあるかもしれません。
しかし心に留めておくべきは、
京子アルシャーさんが
『老犬だって散歩に行きたい』に
書かれていたように、歳をとったからといって
散歩や遊びを減らすことは老化を
加速することになるということです。
現在 CDS には特効薬はありませんが、
散歩や遊びを通じて脳を活性化させ、
精神的な刺激を与えることが発症時期や
進行を遅らせることに役立つのは
明らかです。
愛犬と長く楽しく暮らしていくために、
愛犬の年齢にかかわらず、
日々の生活スタイルを改めて
見直してみるのもいいかもしれませんね。
(satoko)
【参考サイト】
・Science News