ウォール・ストリート・ジャーナル 11月5日(木)13時37分配信
米ノースカロライナ州シャーロットの
トニア・コックスさんは、
シュガーレスガムに入っている
甘味料のせいで愛犬の
マーフィージョーが死にかけるとは
想像すらしていなかった。
1年ほど前のある日、
コックスさんが帰宅すると、
ラブラドゥードル(プードルと
ラブラドール・レトリバーの交配犬種)の
マーフィージョーがカウンターの上に
置いてあった息子の「アイスブレーカー」
ガムを前足で床にはたき落とし、
20個ほど食べてしまっていた。
しばらくしてマーフィーは吐き始め、
その後、昏睡(こんすい)状態に陥った。
地元の動物病院で肝不全と診断された。
コックスさんは病院で、
「子どもたちを(診察室に)入れて
お別れのあいさつをさせてあげてくださいと
言われ」、
「みんなで犬を抱いて泣いた」という。
だが、3度の血漿(けっしょう)輸血の末、
マーフィージョーは復活した。
治療費は5000ドル(約60万円)を超えた。
犯人はキシリトールだった。
食品への使用が増えている人工甘味料だ。
人間が食べても安全とされているが
犬には非常に有害で、
犬に良くないことで知られる
ミルクチョコレートの100倍もの
毒性がある。
専門機関によると、キシリトールによる
犬の中毒事故が増えており、
死に至るケースも出ている。
ペットの急性中毒に対応する
「ペット・ポイズン・ヘルプライン」
センターのアナ・ブルトラーグ博士は、
キシリトールに関する電話が
「劇的に増えている」と述べた。
同センターでは、キシリトール誤飲
(それと疑われる例を含む)についての
電話は今年これまでに2800件に上っている。
09年には300件だった。
博士によれば、キシリトールは
同センターのスタッフが対応する
食中毒の中でも最も危険な部類に入る。
「キシリトールについて聞いたことがない、
あるいは、この無害な普通の甘味料が
ペットの毒になり得ることを
知らない犬の飼い主は依然多い」という。
キシリトールを食べて死ぬ
犬の数について、包括的なデータはない。
一部の飼い主はキシリトール入り
製品に警告ラベルを貼るよう
求めており、オレゴンの団体はそうした
動きを求めてオンラインの署名活動を
行っている。
だが、そうした運動が現実的でなく
犬の飼い主に周知させることが
最善の対策だと考える専門家もいる。
メーカーは、キシリトール入り製品には
適切なラベルを貼っており、
それらの製品は人間用に
作られていると話す。
キシリトールはガムのほか、
ミント、ガム状のビタミン剤、
歯磨き、一部のピーナツバター、
メラトニンの睡眠薬に使われている。
カロリーが砂糖の3分の2ほどで、
糖尿病の人にとっては砂糖より安全だ。
虫歯予防の効果を示す研究を
挙げるガムメーカーもある。
キシリトールは植物から採取される
糖アルコールの一種で、
人間は耐性があるが犬が摂取すると
急激にインスリンが分泌され、
低血糖症状を引き起こし、
発作や脳障害につながる恐れがある。
肝不全の危険もある。
米国動物虐待防止協会(ASPCA)は
2004年にキシリトール関連で82件の
電話を受け、初めて警告を発した。
14年には3727件の電話があり、
少なくとも11匹が死亡した。
報告されていない事故も多いとみられ、
同協会では実際の中毒事故は
これより多いとみている。
キシリトールはネコにとっても
毒なのではないかという懸念もあるが、
それを裏付けるものはほとんどないという。
ウシやヒヒなど他の動物に有害な
可能性もある。
By MARK MAREMONT