オーヴォ10月20日(火)15時0分配信
全国各地で、少子高齢化・
過疎化が進んでいます。
そんななか、ひとり暮らしの
お年寄りや高齢者だけの世帯で、
家族としてペットを迎え入れたい
という声を多く聞きます。
ペットを飼うことで高齢者の
生活に規則正しいリズムが
生まれたり、生きることの
張り合いを得ることができますし、
ペットにとっても長い時間
飼い主が家にいてくれることは
よいことです。
ペットを飼うことで健康寿命が
伸びる、ということも
よく知られています。
しかしそういった思いとは裏腹に、
高齢者がペットを飼うことは
簡単ではありません。
たとえば保健所や動物保護団体から
ペットを引き取ろうとしても、
年齡や家族構成を理由に
断られることがあります。
ペットの生涯の最後まで責任をもって
飼うことができないおそれがある、
飼い主になにかあったときにペットが
取り残されてしまう、
などがその理由です。
高齢者はペットを飼う自由さえ
制限されてしまっているのです。
たしかに高齢者はペットを
最後まで飼うことができないかも
しれません。
しかしそれは高齢者だけの
問題でしょうか?
そうではないと思います。
だれだって(私だって)、
いつ体調を崩してしまうか
わかりません。
体調だけでなく、住まいや経済的な
理由で、ある日突然ペットを
飼えなくなってしまうおそれは、
だれにだってあります。
完璧なペットがいないように、
完璧な飼い主もまた、いないのです。
高齢者がペットを飼うことは
「難しい」ことかもしれません。
でも難しいことと「できない」ことは
違います。
そして周囲がサポートすることで
「難しい」を少しでも軽減することが
できたら、高齢者世帯であっても
よき伴侶としてペットと暮らすことは
できるのではないでしょうか。
ふくしまプロジェクトでは、
そんな思いから、高齢者世帯での
ペット飼育の支援活動を行っています。
活動を通じて見えてくるのは、
いろいろな苦労をしながらも、
命ある仲間であるペットを愛し、
慈しんでいるみなさんの姿です。
たとえばTさん。
ひとり暮らしのTさんは昔から
犬を飼ってきました。
Tさんがそのとき飼っていた犬は、
秋田犬の血の混じった雑種で、
中型よりも少し大きいくらい。
当然ながら力もあります。
ある日散歩の途中でTさんの手から離れ、
近くを歩いていた近所の方に駆け寄り、
転倒させてしまいました。
この犬では力が強くて自分では
手に負えないかもしれないかも
しれない、と悩んだTさんから連絡が
あったので、私たちはTさんのお宅を
訪ね、様子を確認してお話を
聞きました。
Tさんは犬のことをよく理解し、
十分な自由を与えながらも節度を
しつけできる、よい飼い主でした。
そこで我々は飼っていた犬を引き取り、
代わりにシェルターにいた、
二回りほど小さい、おとなしい犬を
預かってもらうことにしました。
一度はもう犬を飼うことを
あきらめたTさんの自宅では、
今は以前と同様に犬が穏やかに
暮らしています。
そして、Tさんが飼っていた秋田犬の
血が混じった犬には、その行き届いた
しつけのおかげで、引き取りたいと
申し出てくれた家族が現れ、
現在はその家庭で迎え入れる
準備が進められています。
できればずっと同じ家で
過ごすことが、動物にとってはベスト
なのかもしれません。
しかしあまりにもそのことを
強要することは、人にとっても
動物にとっても決して幸せでないことも
ありえます。
人も動物も少しでもよい環境で
暮らすこと、それこそが我々の
目指す姿です。
これからも高齢者からの相談は
あるでしょう。
なかには希望を叶えることは
できないこともあるかもしれません。
しかしこれからも、少しでも多くの人が
動物との豊かな共生ができるよう、
進んでいきたいと思っています。
筆者:藤谷玉郎(ふじやたまお)
一般社団法人ふくしまプロジェクト理事
東北大学大学院卒業。
福島県庁・秋田県庁を経て
2014年4月より現職。
東日本大震災後に被災地派遣で
福島県庁に出向し動物保護行政に
携わる。
その当時の日々をブログ
「福島日記」に記録。
web:http://fukushimaproject.org/
ブログ「福島日記」
:http://fujkushimanikki.blogspot.jp/