デンマークの動物園が、
来園者の子供たちの目前で
ライオンの解剖を行ったところ、
国外や動物愛護団体などから
非難の声が殺到した。
同国では、殺処分された動物の
公開解剖は「教育の一環」と
認識される傾向にある。
この習慣への賛否とは?
《ライオン飼育に関する問題》
英BBCによると、ライオンは、
動物園内の頭数が増えると
ケンカや母親の育児放棄、
大人のライオンによる
子ライオンへの攻撃などの
問題が増えるという。
〔BBC(英語)〕
解剖されたのは生後9カ月で
殺処分されたメスライオンの死骸
10月15日にライオンの公開解剖を
行ったのは、デンマーク南部にある
オーデンセ動物園。
今回解剖されたのは、
生後9カ月で殺処分された
メスライオンの死骸。
近親交配を防ぐため
殺処分された3頭のうちの1頭
オーデンセ動物園は、
大型のネコ科動物が増え過ぎ、
引き取り先も見つからなかったとして、
2015年2月に3頭のライオンを
殺処分した。
解剖されたのはそのうちの1頭で、
他の2頭と共に冷凍保存されていた。
解剖イベントには大人と子供、
300~400人が集まった
ライオンの解剖イベントには、
大人と子供を合わせて300~400人が
集まった。
中には4歳の幼い子供もいた。
10月15日は、デンマークの
学校の秋休み期間中にあたる。
皮を剥ぐと周辺には死んだ
動物の臭いが漂った
動物園のガイド役が解剖で
最初に行ったのは、舌の切除。
その後、皮が剥がれると
、死んだ動物から出る臭いが
辺りに充満した。
わずか数センチしか離れていない場所で
見ていた子供のうちの数人は、
鼻をつまんだり顔をしかめたりした。
「生かしていたら近親交配が…」。
飼育員が殺処分された理由を
見物客らに説明
飼育員の一人は、
「もしそのまま生かしていたら、
自分の姉妹や母親と交尾、
つまり子供をつくってしまうかも
しれなかった。
これは、近親交配と呼ばれる」と、
なぜ健康で若いライオンが
殺処分されたかを見物客らに説明。
参加した男の子「見たくない」、
女の子「面白かったけど
ちょっと気持ち悪かった」
ある男の子は解剖は「見たくない」と
言ったが、デンマークの公共放送DRの
インタビューを受けたある女の子は、
「面白かったけどちょっと
気持ち悪かった」と話していた。
ある11歳の女の子
「人間の体の中とよく似ているところが
すごい」
11歳の女の子、
Sofie Beyerは「とっても臭かったけど、
ライオンの体の中がどうなっているのか
見るのは楽しかった。
人間のものとよく似ているところが
すごいと思った」と話した。

10月15日、公開解剖のため
テーブルに載せられるライオンの死骸。
2月に殺処分され、この日まで、
他の2頭とともに冷凍保存
されていた(AP)

見学者の中には、辺りに漂う臭いに
耐え切れず鼻を覆う人も。
ガイド役のスタッフ(手前)は
手際よく解剖を進める(ロイター)
「背筋の凍る見せ物」
(動物愛護団体)。
13万人がネット上の請願書に署名
、非難の多くは英語圏
動物愛護団体「国際人道協会(HSI)」
欧州支部の広報担当者はオーデンセ動物園を、
死んだライオンを使って
「背筋の凍る見せ物」を
していると非難。
AFPによると、13万5000人が
、同園の公開解剖を非難するネット上の
請願書に署名。
同園は、解剖を支持するコメントの
ほとんどがデンマーク語での
投稿であるのに対し、非難の多くは
英語で書かれていると説明する。
見たい?見たくない?
ライオンの解剖を公開
デンマークの動物園に賛否の声
「この動物園の運営者たちは病気だ」
「かわいそうな子供たち」
「『これは教育』という破綻した
スローガンが何年間も野生動物の上に
のしかかってきた」
昨年、コペンハーゲン動物園がキリンを
解剖する様子を公開した際にも抗議が
殺到している
デンマークでは、2014年2月に首都
コペンハーゲンの動物園が解剖した
キリンをライオンの餌にする様子を
公開した際にも、職員を脅迫する
電話やメールなどが殺到している。
【関連記事】
殺処分のキリン解体を一般公開、
死骸はライオンの餌に〔2014年2月10日 CNN〕
キリン処分の動物園に殺人予告、
是非巡る論議白熱〔2014年2月11日 CNN〕
デンマークの動物園、
キリンに続き親子ライオン4頭を
殺処分〔2014年3月28日 AFP〕
デンマークでは動物の公開解剖は
「教育の一環」
自然について教える方法のひとつとして、
定期的に行われている
デンマークの動物園では、
動物の公開解剖は自然について
子供たちに教える方法の一つとされ、
定期的に行われている。
オーデンセ動物園では20年前から実施。
これまでもラクダ、ポニー、
バクなどを解剖
オーデンセ動物園は約20年前から
公開解剖を行っており、
今回のライオンの解剖についても
「教育目的」と説明する。
AFPによると、同園は過去にもラクダ、
ポニー、バクなどを公開解剖
してきたという。
殺処分のライオンを公開解剖
子供含む希望者に デンマークの動物園
コペンハーゲン動物園では殺処分した
動物全てを解剖。
死骸の一部は研究用にし、
残りは肉食動物の餌に
欧州の345施設が加盟する
欧州動物園水族館協会(EAZA)の
レスリー・ディッキー代表によると、
2014年にキリンを公開解剖した
コペンハーゲン動物園では殺処分した
動物全てを解剖し、死骸の一部は研究用に
、残りは肉食動物の餌にしている。
キリン処分の動物園に殺人予告、
是非巡る論議白熱〔2014年2月11日 CNN〕
オーデンセ動物園で飼育長をしている
Nina Collatz氏は、公開解剖の
様子について「子供たちはできるだけ
(動物に)近寄ろうとし、
『心臓は見られる?』などとたくさんの
質問をする。ちっとも怖くはない」、
「時々、解剖の際の血について
心配する親もいるが、子供たちにとっては
単に面白いのだ」と話す。
「動物の公開解剖は極めて北欧的なもの。
(対象が)かわいいことが批判的な
反応を招いている」(同園CEO)
オーデンセ動物園のCEOは、
「動物の公開解剖は極めて北欧的なもの。
(対象が)かわいいことが重要な要素と
なっている。
もしヤギだったら、こうした(批判的な
)反応にならなかっただろう」と述べた。
農業が経済の重要な一部を成している
デンマークでは、食肉解体場の社会科見学を
行う学校もある(AFP)。
「私もウチの連中(動物王国の動物)が
死ねば解剖し、希望者がいれば
見せることも」
(ムツゴロウこと作家の畑正憲氏)
ムツゴロウこと作家の畑正憲氏は
「非難する人がいるのは分かりますが
、解剖は動物を理解するための行為でもある。
動物園の権利なので是非は問えない」と話す。
さらに「私もウチの連中(動物王国の動物)が
死ねば解剖し、理解した上で弔います。
公開はしませんが、
希望者がいれば見せることもある」と加える。
ネット上でも動物の公開解剖に賛同する声
「おびえる?
子供たちは強制されて見物した
わけじゃない」
「無料の解剖授業!
参加した子供の中に将来の獣医がいるかも」
近親交配防止のための殺処分についても議論
国際人道協会は、動物園での「無責任な」
過剰交配を非難。近親交配は
避妊措置で防げるとする
動物愛護団体、国際人道協会
(HSI)欧州支部の広報担当者は、
今回のライオンのように殺処分が
必要とされる原因は、
動物園でネコ科動物の「無責任な」
過剰交配が行われているからだと非難。
近親交配は避妊措置で防げると反発する。
殺処分は頭数調整や遺伝的管理のために
「科学的に有効な解決策」
(欧州動物園水族館協会)
欧州動物園水族館協会は、
飼育頭数を調整し、遺伝的に管理する上で
殺処分は「科学的に有効な解決策」だと主張。
教育目的の公開解剖も動物種の理解を
普及させる意義があり
「有効な選択肢」だと擁護する。
「何百万ものニワトリが
みじめな一生を送っている。
でも誰も何も言わない」
(デンマーク動物愛護協会)
デンマーク動物愛護協会は、
ライオンの解剖だけを非難するのは
おかしいと指摘。
「何百万ものニワトリがみじめな
一生を送っている。
でも誰も何も言わない」と
ツイッターに投稿した。