
「〃いのち〃のすくいかた」
捨てられた子犬クウちゃんからのメッセージ
(集英社みらい文庫・620円+税)
きっかけは、線路わきに捨てられていた
水色のゴミ袋。
「犬(死)」と書いた紙が張ってあった。
「あけてみると、赤い首輪をした
白い大きな大が入っていました。
死んで″ゴミ″扱いにされた犬の
なきがら。
悲しくてくやしくて、児玉さんは
袋を河川敷に運び、土をかけながら
涙がとまらなかったという。
「捨てられる命を考え、知ろう」。
平成9年、殺処分を待つ動物たちの
収容施設を訪れ、取材を始めた。
フォト・ストーリーでつづる本書の
前半はつらい内容だ。
おりの中でおびえ、身を縮める大や猫。
人恋しげに人間を見上げる犬の多くは、
首輪をつけたままである。
「ほとんどが元ペットで、年老いた、
妊娠したなど、人間の身勝手な理由で
捨てられているんです」
写真が語る動物たちの声なき声。
中ほどに記された著者のメッセージが
心を打つ。
「ここに写っている子たちは、
もうこの世にはいません」
後半は少しほっとした。
捨てられ施設に収容された雑種の子
「クウちゃん」が犬譲渡制度によって
「譲渡候補犬」となり、新しい家族に
引き取られていくまでを丁寧に
追っている。
「幸運にも救われるいのちがある。
制度があり、幸せな家族を待つ
動物たちがいることも知ってほしい」
現状を伝える
「草の根ポスター大作戦」のほか、
10年に大阪の喫茶店で始まった
写真パネル展は全国で600回を
超えた。
その中でうれしいことがあったという。
小学校で話をした後、1人の子供から
手紙が届く。
子猫を保護したが家では飼えず、
片っ端から近所の家のベルを押し、
全部の引取先を決めることができた
―というものだった。
「何匹いたんでしょうね。
子供は素直に動物の気持ちに共感して
くれます」
捨てられるいのちと救われるいのち。
双方を対比させることで著者は、いまだ
年間処分数10万匹(大猫)を超える
命の「すくいかた一を問いかけている。
(山上直子)

【プロフィル】児玉小枝
〈こだま・さえ〉
昭和45年生まれ、大阪在住。
フォト・ジャーナリスト。
各地で写真パネル展
「ラスト・ポートレート」を開催。