近年は空前のペットブームといわれています。
ペットを家族の一員として迎え、
終生飼養に努めている飼い主は少なく
ありませんが、一方で、今なお、
1年に12万頭を超える犬猫が殺処分の
運命を辿っている現実をご存知でしょうか?
もしも、安易にペットを飼った結果、
やむを得ない事情があったとしても
自分のせいで“殺処分”の頭数を
増やす事態を助長することになって
しまえば、悔やんでも悔やみきれません。
今回は、株式会社オウチーノの
調査などを参考に、市議として8年間
“動物殺処分ゼロの社会”を
目指してきた愛玩動物飼養管理士の
筆者が、ブームの裏でどんな現実が
起きているのかをお伝えします。
■いまだ年間約3万頭の犬が殺処分の運命に
現在の日本国内では、約1千万頭の犬が
飼われていて、これは14歳以下の人間の
数よりも多いという試算結果も出ています。
その一方で、環境省が発表している
平成25年度の統計では、
犬で約2万8千頭、
猫は約9万9千頭もの命が、
殺処分されています。
ところで、殺処分と聞くと“安楽死”を
イメージしている方もいらっしゃるかも
しれませんが、現実はもっと悲惨で、
多くの自治体では二酸化炭素
(炭酸ガス・CO2ガス)によって
“窒息死”させている実態は
ご存じでしょうか?
最近では、獣医師による麻酔薬注射や
薬剤投与による“安楽死”を
行っている自治体もありますが、
予算の都合などで“窒息死”を通じて
殺処分をしている自治体のほうが
圧倒的なのです。
■譲渡会を検討する人も増えている
では、言葉は話せなくても“命”ある
彼らを救うことは、
本当に難しいのでしょうか?
近年では、引き取られた犬猫を
“譲渡会”によって新しい飼い主さんを
探す取り組みも進められています。
オウチーノが20~49歳の男女324名に
実施した調査で、
「“保健所や動物愛護センター等の施設・
譲渡会”から犬を譲り受けられることを
知っていますか?」と尋ねてみると、
全体の75.0%が「知っている」と回答したそう。
そして、「今後、 犬を飼う場合、
里親からの引き渡しを検討できますか?」
との問いには、
93.7%が「検討できる」と
意思表示しています。
もしもご存じなかった方で、これから
ペットを飼おうと検討している方は、
お住まいのエリアの譲渡会を
調べてみるのも一案です。
■ペットショップに子犬しかいないのは
不自然?
ペットを飼う=ペットショップに行く
選択肢だけではないことが浸透しつつある、
喜ばしい実態がうかがえます。
しかし、譲渡会をご存じなかった方は
一般的なペットショップで販売されている
犬は1歳未満の子犬が多い実態を、
不自然に感じたことはありませんか?
子犬や子猫たちに無事に飼い主が
見つかればいいのですが、
もし売れなかった場合には、
ペットショップ側の判断で、
ブリーダーに譲渡するか保健所に
引き取ってもらうのが一般的だそう。
そのように“売れ残った”結果が、
年間約3万頭の殺処分の一因とも
指摘もされています。
いかがですか、あなたは譲渡会の
存在をご存じでしたでしょうか?
近年、“殺処分ゼロ”を目指す
機運が高まっており、
少し前と比較すれば殺処分の頭数自体は
減少傾向にはなっています。
ですが、ドイツのように殺処分頭数が
ゼロの国に比べれば、日本の取り組みは
まだまだ遅れているといえるでしょう。
人間と動物が気持ち良く共存できる
社会にするために、人間のエゴによって
処分される命がゼロになるよう、
私たちひとりひとりが真剣に
考えなくてはならない時期が
来ているのではないでしょうか。

提供:WooRis