犬猫の殺処分がなくなる日は来るか--。
2014年度に「殺処分ゼロ」を実現した
神奈川県が、殺処分室のない新しい
タイプの動物保護センターの建設に
乗り出す。
捨てられるなどしたペットを新しい
飼い主に譲渡する拠点として活用し、
総工費11億円は寄付でまかなう方針。
全国で年間10万匹を超えるとされる
犬猫の殺処分は各自治体で課題と
なっており、県関係者からは
「成功すれば動物愛護の実現と財政不足を
補う一石二鳥の試みとして全国に広がる」
との声も上がる。
県動物保護センター(平塚市)の
処分数のピークは、犬が1973年度の
約1万8000匹、猫が88年度の
約1万2000匹。時代の推移とともに
放し飼いが減ったことに加え、最近は
ボランティア団体を通じた譲渡の仕組みが
整ってきたことなどから減り続け、
県内では14年度、市独自で運営する横浜、
川崎、横須賀の動物愛護センターを除き、
犬猫ともに殺処分ゼロとなった。
現在の県のセンターは、約40年前に
殺処分を目的に建てられたため、
ガス室と焼却炉が施設の主要な部分を
占める。
また、六つ並んだ犬舎は、犬が
1日ごとに犬舎を移されて6日目で
殺処分されることから
「残酷さの象徴」との指摘も
あった。
大型犬と小型犬を一緒に収容するため、
けんかなども発生していたという。
建て替えの必要性が浮上する中、
県が着目した一例が、京都府と京都市が
合同で寄付を募り、今年4月にオープン
させた
殺処分室なしの動物愛護センターだった。
同センターは、寄付で集まった
1億1100万円のうち8000万円が
総工費約7億円に充当された。
県の計画では、新センターに動物用の
個室やドッグランなどを整備。
ボランティアがシャンプーや
トリミングなどを行える施設、
譲渡の際に使うスペース、一般来場者と
動物が触れ合えるスペースを設け、
災害時にはペットの収容拠点としても
利用する。
県は開会中の定例議会での承認を目指し、
オープン予定の前年の18年度までに
11億円を集める方針だが、寄付が
集まらなかった場合も税金を投入して
建設する。
県幹部によると、県のセンター設置の
検討委員を務める女優の杉本彩さんや、
2020年を目標に殺処分ゼロを目指す
財団を設立したフリーアナウンサーの
滝川クリステルさんら著名人にPR役を
依頼することも検討するという。
一方で、京都の場合は1億円の
大口寄付と杉本さんが寄付した
580万円が大部分を占め、京都市の
関係者は「そう簡単には集まらない」
と話す。
神奈川の担当者は「こういう取り組みは
心意気が大事。
断られるのを承知で動物好きの
芸能人らに体当たりでお願いするつもり」
と話しているが、県議会には
「ボランティアが活動資金とする寄付と
食い合う」として
手法に反対する意見もあり、
曲折も予想される。
【大場弘行】

神奈川県動物保護センター(平塚市)の
犬舎の様子。
かつては6日目に
殺処分されていた
=県提供