字幕をつけるのは大変な作業です。
翻訳をして、秒数に合わせて、できるだけ短くして。
何百というセリフに日本語を割り振っていくのです。
ありがとう。ほんとうにご苦労さまです。
ただ、だいたいロシア語の字幕って、英語訳から重訳されるんですよね。
で、英語を得意とする人がつけるんでしょうけれど、ロシア文化・歴史・社会に疎いことが多いようです。
字幕の場合、視聴者は、字幕製作者の理解の限度を超えて理解することはできません。
字幕製作者がわからなければ、視聴者だって観てわかるわけないのです。
そもそも、渡される英語の訳が間違っていたら、それはもう日本語にする人の責任じゃありませんしね。
そこで、今日は第一話の放送を振り返って、気になったところをフォローしてみます。
エリザヴェータ女帝:「ポーランドの王女は…お尻の大きさはー 50センチ」
(私):ええええーって?!
正しくは:Двадцать вершков. ⇨ 89センチでした、ほっ
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フリデリーケ:「私のこと、フィッチェンって呼ばないで」
(フィッチェン ???)
正しくは:Фике⇨ 「フィーケって呼ばないで」(フィーケはエカテリーナの幼少時の愛称)
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(エリザヴェータ女帝とベストゥージェフ伯爵の会話)
エリザヴェータ女帝:「誰が彼女に会ったの?」
⇨「誰が彼女を迎えに行ったの?」
迎えに行ったのは、『侍従のサルトゥイコフ公爵』なんですが、日本語では一貫して『伯爵』に格落ちしています… 『公爵』ってしっかり連呼されているのに、なぜでしょう?
それから『プリンセス(принцесса)』を片っ端から「王女」って訳しているのもよくないですね。
これはその人によって「皇女」とか「王女」とか「公女」とかしないと。フリデリーケはプロイセンの王女じゃありませんからね。
エリザヴェータ女帝:「ドイツ王女はもう候補外」
⇨う〜ん、これは字数を考えると、厳しい選択だったはず。女帝の言ってるのは
「ドイツの公女は、競争の始まる前に飛び出て行ってしまうかもね」
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フリデリーケ:「ロシアに行きたくない」
そんなこと言ってません ⇨ 「ロシア語では感じがわからない」
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(エリザヴェータ女帝とピョートルの会話)
エリザヴェータ女帝:「要塞まで無事に行けるといいわね」
(要塞までの道に伏兵がいるわけではありません)
⇨ 「どうやら、やはり要塞に行ってこないといけないようね」
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(ベストゥージェフ伯爵とレストク伯爵の会話は想像力のたまものですね)
ベストゥージェフ:「フランス人の心には血が通っていないと聞いたぞ …(以下略)」
⇨ 「ピョートル大帝によると、フランス人には心臓の代わりに香水瓶があるそうだ。君はロシアに暮らしているが、ロシア人にはなっていない。」
レストク:「国の実体は君たちの理想と異なっている」
(この名言は誰が考えたのか…)
本当は ⇨ 「だが、信じてくれ、私は香水と心の違いがわかる」(ロシア語のひっかけあり。「香水 (духи)」は「魂 (дух)」の複数形)
ベストゥージェフ:「この国は成長した。ロシアへの恐れが弱まり、憎しみが強まった」
(もう訳すのが嫌になったのかな?)
正しくは ⇨ 「ロシアは成長した。今やロシアを弱い国々は恐れ、強い国々は憎んでいる」
ベストゥージェフ:「じゃあな」
(ってここは) ⇨ 「オールヴォワール」 フランス語やん
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テロップ「コサック族がケルチのイエニカレ要塞を破壊した」
⇨ コサックは民族ではありません。元逃亡農奴などの辺境の自由民たちのことで、彼らは騎馬武装集団を組織していました。
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(乳母とイヴァン6世)
乳母:「黄金のはしごを人々が見上げているの。皇帝や王女、粉屋、修理屋がね。あなたはどれ?」
(これ、有名なロシアの子供の数え歌なんですけど。それにしても、はしごを見上げるって… 出初式?)
⇨ 「金色の玄関にすわっていたのは、皇帝、皇女、王様、王子様、靴屋、仕立て屋です。あなたはだあれ」
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テロップ:「プロイセン大使 バロン」
⇨ バロンは名字じゃありません。「男爵」です
正しくは、「プロイセン大使 マルデフェリド男爵 (барон Мардефельд)」
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…だんだん、自分が意地悪なしゅうとめになった気がしてきたので、もうやめます。
でも、本当に字幕をつけるのって、大変な仕事なんです。
このくらい間違えがあったとしても、私はすごくありがたいと思います。
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