源氏物語イラスト訳【紅葉賀147】主上の御梳櫛
主上の御梳櫛にさぶらひけるを、果てにければ、主上は御袿の人召して出でさせたまひぬるほどに、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。
源氏物語イラスト訳
主上の御梳櫛にさぶらひけるを、
訳)桐壺帝の御髪梳りに伺候したが、
果てにければ、
訳)終わったので、、
主上は御袿の人召して出でさせたまひぬるほどに、
訳)帝は御袿係の者をお呼びになって外にお出になりあそばした時に、
【古文】
主上の御梳櫛にさぶらひけるを、果てにければ、主上は御袿の人召して出でさせたまひぬるほどに、
【訳】
桐壺帝の御髪梳りに伺候したが、終わったので、帝は御袿係の者をお呼びになって外にお出になりあそばした時に、
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■【主上(しゅしょう)】…お上。桐壺帝
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒桐壺帝)
■【梳櫛(けづりぐし)】…髪を櫛(くし)でとかすこと
■【に】…場所の格助詞
■【さぶらふ】…「あり」の謙譲語(作者⇒桐壺帝)
■【けれ】…過去の助動詞「けり」已然形
■【を】…逆接の接続助詞
■【果て】…タ行下二段動詞「果つ」連用形
※【果(は)つ】…終わる
■【に】…完了の助動詞「ぬ」の連用形
■【けれ】…過去の助動詞「けり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【御袿(うちき)の人】…御袿係の者(衣装担当の者)
■【召(め)す】…「呼ぶ」の尊敬語(作者⇒帝)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【出で】…ダ行下二段動詞「いづ」未然形
■【させ】…尊敬の助動詞「さす」連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒帝)
■【ぬる】…完了の助動詞「ぬ」の連体形
■【ほどに】…時に
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主上の御梳櫛に⒜さぶらひけるを、果てにければ、主上は御袿の人召して出でさせ⒝たまひぬるほどに、また人もなくて、この内侍、常よりもきよげに、様体、頭つきなまめきて、装束、ありさま、いとはなやかに好ましげに見ゆるを、「さも古りがたうも」と、心づきなく見たまふものから、「いかが思ふらむ」と、さすがに過ぐしがたくて、裳の裾を引きおどろかしたまへれば、かはぼりのえならず画きたるを、さし隠して見返りたるまみ、いたう見延べたれど、目皮らいたく黒み落ち入りて、いみじうはつれそそけたり。
【問】 傍線部⒜⒝の敬意対象として最も適当なものを選べ。
1.⒜ 光源氏 ⒝ 桐壺帝
2.⒜ 光源氏 ⒝ 桐壺帝
3.⒜ 源典侍 ⒝ 光源氏
4.⒜ 桐壺帝 ⒝ 源典侍
5.⒜桐壺帝 ⒝ 桐壺帝
敬語の敬意対象は、大学入試で必須事項です。
誰に対する敬意表現なのかは、
敬語の種類に左右されますので、
まずは、「さぶらふ」「たまふ」の敬語の種類を押さえましょう。
基本的に、敬語の種類は丸暗記するのですが、
この5つの敬語だけは、種類が複数あるので、文脈と照らし合わせて考えます。
まず、「さぶらふ」は、
①伺候する・お仕えする【謙譲語】
②あります・ございます【丁寧語】
の2つがありますが、
ここでは、直前に「主上に」とありますので、明らかに「主上」に対する謙譲語ですね!
また、「たまふ(u)」となった場合は、尊敬語となりますが、
「~させたまふ」の場合は、文脈により、
①「させ」が使役の場合⇒「させなさる」
②「させ」が尊敬の場合⇒「~あそばす」
と訳出が変わることにも注意しましょう。
ちなみに、源典侍は、身分が高くないので、敬語は用いられません。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【5】