源氏物語イラスト訳【紅葉賀146】ものなど
ものなどのたまひてけれど、人の漏り聞かむも、古めかしきほどなれば、つれなくもてなしたまへるを、女は、いとつらしと思へり。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。
源氏物語イラスト訳
ものなどのたまひてけれど、
訳)何かお話しかけなどなさったけれど、
人の漏り聞かむも、古めかしきほどなれば、
訳)人が漏れ聞くとしたら、それも、年とった年齢であるので、
つれなくもてなしたまへるを、
訳)そっけなく振る舞いなさっているのを、
女は、いとつらしと思へり。
訳)源典侍は、とても薄情だと思っていた。
【古文】
ものなどのたまひてけれど、人の漏り聞かむも、古めかしきほどなれば、つれなくもてなしたまへるを、女は、いとつらしと思へり。
【訳】
何かお話しかけなどなさったけれど、人が漏れ聞くとしたら、それも、年とった年齢であるので、そっけなく振る舞いなさっているのを、源典侍は、とても薄情だと思っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【もの】…何か
■【など】…例示の副助詞
■【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【て】…完了の助動詞「ぬ」の連用形
■【けれ】…過去の助動詞「けり」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【の】…主格の格助詞
■【漏り聞く】…漏れ聞く
■【む】…仮定の助動詞「む」連体形
■【も】…強意の係助詞
■【古めかしき】…シク活用形容詞「古めかし」連体形
■【ほど】…年齢
■【なれ】…断定の助動詞「なり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【つれなく】…ク活用形容詞「つれなし」連用形
※【つれなし】…そっけない。冷淡だ
■【もてなす】…振る舞う
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【る】…完了(存続)の助動詞「り」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【女】…ここでは、源典侍のこと
■【は】…取り立ての係助詞
■【いと】…とても
■【つらし】…薄情だ
■【と】…引用の格助詞
■【思へ】…ハ行四段動詞「おもふ」已然形
■【り】…完了の助動詞「り」終止形
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戯れ事言ひ触れて試みたまふに、似げなくも思はざりける。あさまし、と思しながら、さすがにかかるもをかしうて、ものなどのたまひてけれど、人の漏り聞かむも、古めかしきほどなれば、つれなくもてなしたまへるを、女は、いとつらしと思へり。
【問】 傍線部の理由として最も適当なものを選べ。
1.源氏は、源典侍に興味が湧いたものの、源氏の相手としては不釣り合いだったから。
2.源氏は、源典侍に興味が湧いたものの、こんな年増に言い寄っていると人が聞いたら体裁が悪いから。
3.源氏は、源典侍のふるまいに驚愕して、自分の相手としてはふさわしくないと思ったから。
4.源氏は、源典侍と恋に興じることは、昔ながらの宮中の慣習にはそぐわないと感じたから。
5.源氏は、源典侍に興味が湧いたものの、他の女人に対しても同じように言い寄っていたから。
理由説明の問題は、
必ず前後の文脈と照らし合わせて考えます。
直前に「已然形+ば」(順接確定条件)がありますね!
因果関係になっているならば、必ずこの部分の逐語訳を押さえます。
「ほど」というのは多義語ですが、ここでは「年齢」という意味に解釈できます。
…さて、だれの年齢でしょうか…?
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【2】