源氏物語イラスト訳【紅葉賀137】さるは
「さるは、好き好きしううち乱れて、この見ゆる女房にまれ、またこなたかなたの人びとなど、なべてならずなども見え聞こえざめるを、…」
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は罪悪感に苛まれながらも、左大臣邸にも行かず、二条院で紫の君と過ごすことが多く、父帝から怒られています。
源氏物語イラスト訳
「さるは、好き好きしううち乱れて、
訳)「そうはいうものの、好色がましく乱れたようにふるまって、
この見ゆる女房にまれ、
訳)ここの見える女房であれ、
またこなたかなたの人びとなど、
訳)またここかしこの女たちなどと、
なべてならずなども見え聞こえざめるを、…」
訳)並々でない仲などに見えたり噂も聞こえないようだが、…」
【古文】
「さるは、好き好きしううち乱れて、この見ゆる女房にまれ、またこなたかなたの人びとなど、なべてならずなども見え聞こえざめるを、…」
【訳】
「そうはいうものの、好色がましく乱れたようにふるまって、ここの見える女房であれ、またここかしこの女たちなどと、並々でない仲などに見えたり噂も聞こえないようだが、…」
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■【さるは】…そうはいうものの
■【好き好きしう】…シク活用形容詞「好き好きし」連用形ウ音便
※【すきずきし】…好色がましい
■【うち乱る】…乱れる。くつろぐ(「うち」は接頭語)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【この】…指示連体詞
■【女房】…葵上のおつきの女官
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【まれ】…~であっても(「~もあれ」の略)
■【こなたかなた】…ここかしこ
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【人びと】…逆接の接続助詞
■【など】…例示の副助詞
■【なべてならず】…並々でない、格別だ
■【見え】…ヤ行下二段動詞「見ゆ」連用形
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」未然形
※【聞こゆ】…噂に聞く
■【ざ】…打消の助動詞「ず」連体形撥音便の無表記
■【める】…推定の助動詞「めり」連体形
■【を】…逆接の接続助詞
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「さるは、好き好きしううち乱れて、この見ゆる女房にまれ、またこなたかなたの人びとなど、なべてならずなども見え聞こえざめるを、いかなるもののくまに隠れありきて、かく人にも怨みらるらむ」とのたまはす。
【問】 傍線部の説明として最も適当なものを選べ。
1.源氏がそこらの女房たちなどと格別な仲になっているという噂も、帝は耳にしていない。
2.源氏がたいした身分ではない女人に手を出していると、女房たちは噂し合っている。
3.源氏が心を寄せているのは正妻の他にいるようだと、帝は察している。
4.源氏がそこらの女房たちなどにちょっかいを出しているのだと、正妻は気づいている。
5.源氏が身分の低い女人にうつつを抜かしているという噂は、正妻の耳には入っていない。
【なべてならず】というのは、
並々でない、格別だ
という意味です。
一語一語、ていねいに訳出すると、逆に何を言いたいのか見えなくなってしまう場合があります。
イラスト訳の分量で区切りながら、
イメージを湧かしながら読むと、見えてくることもあります。
着実にトレーニングして、古文目線を鍛えていきましょう!
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【1】