源氏物語イラスト訳【紅葉賀132】かやうに
かやうに、とどめられたまふ折々なども多かるを、おのづから漏り聞く人、大殿に聞こえければ、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。源氏は罪悪感に苛まれながらも、紫の君のいる二条院で時を過ごしています。
源氏物語イラスト訳
かやうに、とどめられたまふ折々なども多かるを、
訳)このように、引き止められなさる時々なども多くあるのを、
おのづから漏り聞く人、
訳)自然と漏れ聞く人が、
大殿に聞こえければ、
訳)左大臣邸にも申し上げたので、
【古文】
かやうに、とどめられたまふ折々なども多かるを、おのづから漏り聞く人、大殿に聞こえければ、
【訳】
このように、引き止められなさる時々なども多くあるのを、自然と漏れ聞く人が、左大臣邸にも申し上げたので、
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■【かやうに】…ナリ活用形容動詞「かやうなり」連体形
※【かやうなり】…このようだ
■【とどめ】…マ行下二段動詞「とどむ」未然形
■【られ】…受身の助動詞「らる」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒源氏)
■【折々(をりをり)】…その時々
■【など】…例示の副助詞
■【も】…強意の係助詞
■【多かる】…ク活用形容詞「多し」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【おのづから】…自然と
■【漏り聞く】…漏れ聞く
■【人】…ここでは、女房たちの意
■【大殿(おほとの)】…左大臣邸。正妻葵の上がいる
■【に】…対象の格助詞
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒大殿)
■【けれ】…過去の助動詞「けり」の已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
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かやうに、とどめられたまふ折々なども多かるを、おのづから漏り聞く人、大殿に聞こえければ、
「誰れならむ。いとめざましきことにもあるかな」
【問】 傍線部の敬意対象として最も適当なものを選べ。
1.紫の君
2.光源氏
3.帝
4.葵の上
5.人
『源氏物語』が入試に出題されたときは、背景知識が重要になります。
もちろん、リード文や注釈に書いてあることも多いため、じっくり読めば背景知識がなくても分かるんですが…
20分やそこらで、じっくり読んでるヒマないよね~!
なので、源氏物語の背景知識は、ある程度押さえておくことが望まれますっ!
「大殿」というのは、語注にも書いたように、「左大臣邸」のことです。大学入試で出題されたら、「源氏の正妻である葵上」が住まう邸であるという注がつくと思われます。
そして、傍線部「聞こえ(きこゆ)」は、
「言ふ」の謙譲語です。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【4】