源氏物語イラスト訳【紅葉賀130】もろともに
もろともにものなど参る。いとはかなげにすさびて、
「さらば、寝たまひねかし」
と、危ふげに思ひたまへれば、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。源氏は罪悪感に苛まれながらも、紫の君のいる二条院で時を過ごしています。
源氏物語イラスト訳
もろともにものなど参る。
訳)一緒に食べ物などを召し上がる。
いとはかなげにすさびて、
訳)ほんの少しだけ箸を付けて、
「さらば、寝たまひねかし」と、危ふげに思ひたまへれば、
訳)「それならば、眠ってしまいなさい よ」と、不安げに思っていらっしゃる ので、
【古文】
もろともにものなど参る。いとはかなげにすさびて、
「さらば、寝たまひねかし」と、危ふげに思ひたまへれば、
【訳】
一緒に食べ物などを召し上がる。ほんの少しだけ箸を付けて、
「それならば、眠ってしまいなさい よ」と、不安げに思っていらっしゃる ので、
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■【もろともに】…一緒に
■【もの】…ここでは、食べ物の意
■【など】…例示の副助詞
■【参る】…「食ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏・紫の君)
■【いと】…とても
■【はかなげに】…ナリ活用形容動詞「はかなげなり」連用形
※【はかなげなり】…ほんのちょっと
■【すさぶ】…慰み楽しむ。気の向くままに…する。慰みに…する
■【て】…単純接続の接続助詞
■【さら】…ラ変動詞「さり」の未然形
※【然(さ)り】…そうである
■【未然形+ば】…順接仮定条件の接続助詞
■【寝(ね)】…ナ行下二段動詞「寝(ぬ)」の連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(源氏⇒紫の君)
■【ね】…完了の助動詞「ぬ」の命令形
■【かし】…念押しの終助詞
■【と】…引用の格助詞
■【危ふげに】…ナリ活用形容動詞「危ふげなり」連用形
■【思ひ】…ハ行四段動詞「思ふ」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
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もろともにものなど参る。いとはかなげにすさびて、
「さらば、寝たまひねかし」
と、危ふげに思ひたまへれば、
【問】 傍線部の意味として最も適当なものを選べ。
1.召し上がる
2.差し上げる
3.おっしゃる
4.申し上げる
5.いただく
【参る】というのは、尊敬・謙譲、両方の意味に用いられる、多義敬語です。
文脈によって、謙譲語や尊敬語と、多様な意味に変化します。基本的に、客体に流されます。
今回は「もの」についていますね。
「もの」を「参る」というつながりになった場合、
「食べ物を」―「召し上がる」という文脈になる場合が多いことも、知っておきましょう。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【1】