マドンナ古文単語230 パワーアップ版-別冊単語カードつき (大学受験超基礎シリーズ)
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「我も、一日も見たてまつらぬはいと苦しうこそあれど、幼くおはするほどは、心やすく思ひきこえて、まづ、くねくねしく怨むる人の心破らじと思ひて、むつかしければ、しばしかくもありくぞ。…」
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。源氏は罪悪感に苛まれながらも、紫の君のいる二条院で時を過ごしています。
「我も、一日も見たてまつらぬはいと苦しうこそあれど、
訳)「わたしも、一日でも見申し上げないのは、とてもつらいことではあるけれど、
幼くおはするほどは、心やすく思ひきこえて、
訳)幼くていらっしゃるうちは、心安くお思い申し上げて、
まづ、くねくねしく怨むる人の心破らじと思ひて、
訳)まずは、ひねくれて嫉妬する女人の機嫌を損ねないようにしようと思って、
むつかしければ、しばしかくもありくぞ。
訳)うっとうしいので、しばらくの間はこのように出かけるのですよ。
【古文】
「我も、一日も見たてまつらぬはいと苦しうこそあれど、幼くおはするほどは、心やすく思ひきこえて、まづ、くねくねしく怨むる人の心破らじと思ひて、むつかしければ、しばしかくもありくぞ。…」
【訳】
「わたしも、一日でも見申し上げないのは、とてもつらいことではあるけれど、幼くていらっしゃるうちは、心安くお思い申し上げて、まずは、ひねくれて嫉妬する女人の機嫌を損ねないようにしようと思って、うっとうしいので、しばらくの間はこのように出かけるのですよ。…」
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■【我】…わたし。光源氏のこと
■【も】…添加・強意の係助詞
■【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
■【たてまつら】…ラ行四段動詞「たてまつる」未然形
※【たてまつる】…謙譲の補助動詞(源氏⇒紫の君)
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【は】…取り立ての係助詞
■【いと】…とても
■【苦しう】…シク活用形容詞「苦し」連用形ウ音便
■【こそ】…強意の係助詞(結びの流れ)
■【あれ】…ラ変動詞「あり」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【幼(をさな)く】…ク活用形容詞「をさなし」連用形
■【おはする】…サ変動詞「おはす」連体形
※【おはす】…「あり」の尊敬語(源氏⇒紫の君)
■【ほど】…うち。時。あいだ
■【は】…取り立ての係助詞
■【心やすく】…ク活用形容詞「心やすし」連用形
■【思ひ】…ハ行四段動詞「おもふ」連用形
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(源氏⇒紫の君)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【くねくねしく】…シク活用形容詞「くねくねし」連用形
※【くねくねし】…ひねくれている
■【怨むる】…マ行上二段動詞「うらむ」連体形
※【怨(うら)む】…恨む。ここでは、嫉妬する意
■【人】…ここでは、源氏の恋人の女人たちの意
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【心破る】…機嫌を損ねる
■【じ】…打消意志の助動詞「じ」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【思ひ】…ハ行四段動詞「おもふ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【むつかしけれ】…シク活用形容詞「むつかし」已然形
※【むつかし】…うっとうしい
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【しばし】…しばらくの間
■【かく】…このように
■【も】…強意の係助詞
■【ありく(歩く)】…出かける。外出する
■【ぞ】…強意の係助詞(文末用法)
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「我も、一日も見たてまつらぬはいと苦しうこそあれど、幼くおはするほどは、心やすく思ひきこえて、まづ、くねくねしく怨むる人の心破らじと思ひて、むつかしければ、しばしかくもありくぞ。おとなしく見なしては、他へもさらに行くまじ。人の怨み負はじなど思ふも、世に長うありて、思ふさまに見えたてまつらむと思ふぞ」
【問】 傍線部の意味として最も適当なものを選べ。
1.素直でない他の恋人たちに遠慮しないようにしよう
2.なよなよとした女人たちに愛想をふるまおう
3.ひねくれた源氏の恋人たちの機嫌を損ねないようにしよう
4.つかみ所のない他の愛人たちに一泡吹かせてやりたい
5.めったに行かない他の愛人たちの機嫌を損なってはいけない
「くねくねし」は、ほとんどの単語帳にはあまり載ってない古語です。
こういう単語は、字義や文脈により識別していくことになります。
「心破る」も、字義で捉える多義語ですね。
そういう単語は、イメージのみを湧かせて、
きちんと頭に入った文法事項で選択肢を検討していきましょう。
助動詞「じ」は、「む」の対義語です。
「む」と同じく、主語で識別していきます。
「じ」の直後に、「~と思ひて」とつながっていくので、心中会話文と捉え、主語は「私(一人称)」と判別することができます!
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。