吉野式ス-パ-古文敬語完璧バ-ジョン (快適受験αブックス)
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大殿油参りて、絵どもなど御覧ずるに、「出でたまふべし」とありつれば、人びと声づくりきこえて、
「雨降りはべりぬべし」
など言ふに、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。源氏は罪悪感に苛まれながらも、紫の君のいる二条院で時を過ごしています。
大殿油参りて、絵どもなど御覧ずるに、
訳)御殿の灯火をおつけになって、いくつかの絵などをご覧になっていると、
「出でたまふべし」とありつれば、
訳)「外出なさる予定である」とあったので、
人びと声づくりきこえて、
訳)従者たちが咳払いして合図申し上げて、
「雨降りはべりぬべし」など言ふに、
訳)「きっと雨が降るに違いなく 存じます」などと言うので、
【古文】
大殿油参りて、絵どもなど御覧ずるに、「出でたまふべし」とありつれば、人びと声づくりきこえて、
「雨降りはべりぬべし」など言ふに、
【訳】
御殿の灯火をおつけになって、いくつかの絵などをご覧になっていると、「外出なさる予定である」とあったので、従者たちが咳払いして合図申し上げて、
「きっと雨が降るに違いなく 存じます」などと言うので、
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■【大殿油参る】…御殿の灯火をおつけになる
※【大殿油(おほとなぶら)】…宮中や貴族の御殿の灯台にともす、油を用いた灯火
※【参る】…「す」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【―ども】…複数の接尾語
■【など】…例示の副助詞
■【御覧ずる】…サ変動詞「御覧ず」連体形
■【御覧ず】…「見る」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【に】…順接の接続助詞
■【出で】…ダ行下二段動詞「いづ」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(人びと⇒光源氏)
■【べし】…予定の助動詞「べし」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【あり】…ラ変動詞「あり」連用形
■【つれ】…完了の助動詞「つ」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【人びと】…従者たち
■【声(こわ)づくる】…(相手の注意を促すために)声や咳(せき)で合図をする
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【降り】…ラ行四段動詞「降る」連用形
■【はべり】…ラ変動詞「はべり」連用形
※【侍(はべ)り】…丁寧の補助動詞(人びと⇒光源氏)
■【ぬ】…強意の助動詞「ぬ」終止形
■【べし】…強意の助動詞「べし」終止形
■【など】…引用の副助詞
■【言ふ】…ハ行四段動詞「いふ」連体形
■【に】…順接の接続助詞
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大殿油⒜参りて、絵どもなど御覧ずるに、「出でたまふべし」とありつれば、人びと声づくり⒝きこえて、「雨降り⒞はべりぬべし」など言ふに、
【問】 傍線部⒜⒝⒞の敬語の種類の組み合わせとして最も適当なものを選べ。
1.⒜ 尊敬語 ⒝ 謙譲語 ⒞ 丁寧語
2.⒜ 謙譲語 ⒝ 丁寧語 ⒞ 丁寧語
3.⒜ 尊敬語 ⒝ 丁寧語 ⒞ 尊敬語
4.⒜ 尊敬語 ⒝ 謙譲語 ⒞ 謙譲語
5.⒜ 謙譲語 ⒝ 尊敬語 ⒞ 謙譲語
【敬語の学習】は、まず、敬語の種類を丸暗記するところから始めましょう。
上記の敬語のうち、⒝は、敬語の種類は1つしかありません。
1.尊敬語(S) ⇒ 主体(S)への敬意
2.謙譲語(K) ⇒ 客体(K)への敬意
3.丁寧語(T) ⇒ 対者(T)への敬意
まずは、どの語がどの敬語の種類なのかを丸覚えします。
⒝は、「聞こえる」がもとの意の多義語ですが、
敬語で用いられるときは、必ず謙譲語になります。
⒜「参る」は、尊敬語か謙譲語か、
⒞「はべり」は、謙譲語か、丁寧語か
を、文脈判断すべき敬語です。
「はべり」は、補助動詞になったときは、必ず丁寧語になります。
「参る」は、基本、「行く」の謙譲語ですが、
⑴「大殿油参る」⇒尊敬
⑵「大御酒参る」⇒尊敬or謙譲
⑶「御格子参る」⇒謙譲
などと、つながりによって、けっこう意味が確定されたりもします。
このように、敬語の種類が2種類あるものは、次の5つです。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。