源氏物語イラスト訳【紅葉賀113】しどけなく
しどけなくうちふくだみたまへる鬢ぐき、あざれたる袿姿にて、笛をなつかしう吹きすさびつつ、のぞきたまへれば、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻り、源氏と藤壺は罪悪感に苛まれています。
源氏物語イラスト訳
しどけなくうちふくだみたまへる鬢ぐき、
訳)取り繕わないで少し毛羽だっていらっしゃる結い上げた鬢の毛筋や、
あざれたる袿姿にて、
訳)くつろいだ袿姿で、
笛をなつかしう吹きすさびつつ、
訳)笛を好ましく気の向くままに吹き鳴らしながら、
のぞきたまへれば、
訳)うかがい見なさったところ、
【古文】
しどけなくうちふくだみたまへる鬢ぐき、あざれたる袿姿にて、笛をなつかしう吹きすさびつつ、のぞきたまへれば、
【訳】
取り繕わないで少し毛羽だっていらっしゃる結い上げた鬢の毛筋や、くつろいだ袿姿で、笛を好ましく気の向くままに吹き鳴らしながら、うかがい見なさったところ、
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■【しどけなく】…ク活用形容詞「しどけなし」連用形
※【しどけなし】…だらしない。しまりがない。くつろいだ
■【うち―】…余剰を残す接頭語
■【ふくだむ】…けば立つ
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【る】…存続の助動詞「り」連体形
■【鬢(びん)ぐき】…結い上げた鬢(びん)の毛筋
■【あざれ】…ラ行下二段動詞「あざる」連用形
※【あざる】…儀式ばらない装いをする。くつろぐ
■【たる】…完了(存続)の助動詞「たり」連体形
■【袿姿(うちきすがた)】…袿だけを着たくつろいだ姿
■【に】…状態の格助詞
■【笛(ふえ)】…横笛
■【を】…対象の格助詞
■【なつかしう】…シク活用形容詞「なつかし」連用形ウ音便
※【なつかし】…親しみ深い。好ましい
■【吹きすさぶ】…気の向くままに吹き鳴らす
※【―すさぶ】…気の向くままに~する
■【つつ】…継続の接続助詞
■【のぞく】…うかがい見る
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【れ】…完了の助動詞「り」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
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しどけなくうちふくだみたまへる鬢ぐき、あざれたる袿姿にて、笛をなつかしう吹きすさびつつ、のぞきたまへれば、女君、ありつる花の露に濡れたる心地して、添ひ臥したまへるさま、うつくしうらうたげなり。
【問】 傍線部の説明として最も適当なものを選べ。
1.源氏の髪の毛や服装が、とてもくつろいでいる状態。
2.源氏の髪の毛や服装が、とても趣深い状態。
3.源氏の髪の毛や服装が、とてもだらしがない状態
4.源氏の髪の毛や服装が、とても見苦しい状態。
5.源氏の髪の毛や服装が、とても好色な状態。
【しどけなし】という古語は、基本的に「だらしがない・しまりがない」という意味です。
ただし、光源氏に用いられた場合には、
「だらしない」というマイナス・ニュアンスではなく、
「気楽な・くつろいだ」というプラス・ニュアンスになることが多いということも知っておきましょう。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【1】