源氏物語イラスト訳【紅葉賀112】つくづくと
つくづくと臥したるにも、やるかたなき心地すれば、例の、慰めには西の対にぞ渡りたまふ。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻り、源氏と藤壺は罪悪感に苛まれています。
源氏物語イラスト訳
つくづくと臥したるにも、
訳)しんみりと横になっているにつけても、
やるかたなき心地すれば、
訳)晴らしようのない気持ちがするので、
例の、慰めには西の対にぞ渡りたまふ。
訳)いつものように、気晴らしとしては若紫のいる西の対にお行きなさる。
【古文】
つくづくと臥したるにも、やるかたなき心地すれば、例の、慰めには西の対にぞ渡りたまふ。
【訳】
しんみりと横になっているにつけても、晴らしようのない気持ちがするので、いつものように、気晴らしとしては若紫のいる西の対にお行きなさる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【つくづくと】…しんみりと
■【臥(ふ)す】…横になる
■【~にも】…~につけても
■【やるかたなし】…心を晴らしまぎらす方法がない
■【心地(ここち)】…心持ち。気持ち
■【すれ】…サ変動詞「す」已然形
■【已然形+ば】…順接確定条件の接続助詞
■【例の】…いつものように
■【慰め】…気晴らし
■【に】…資格の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【西の対(たい)】…二条院の西の対の屋(離れ)。ここには若紫が住まっている
■【に】…場所の格助詞
■【ぞ】…強意の係助詞(結び;たまふ)
■【渡る】…移動する。行く
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
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つくづくと臥したるにも、やるかたなき心地すれば、例の、慰めには西の対にぞ渡りたまふ。
【問】 傍線部の理由として最も適当なものを選べ。
1.源氏は藤壺宮からの返歌に余計に心乱されて、逢いたい気持ちを抑えようもなく、藤壺宮とゆかりのある若紫のもとへ行き、気を紛らわそうとした。
2.源氏は藤壺宮にないがしろにされ、相手にされなかったため、自分のことを一途に思ってくれている若紫のいる西の対に行くことで、紛らわそうとした。
3.源氏は藤壺宮との間に産まれた御子に会いたかったけれど、藤壺宮に拒まれてしまったため、その鬱憤を、幼い若紫をみることで腫らそうとした。
4.源氏は、藤壺宮が返事をくれたものの、余計に逢いたさが募ってしまい、途方に暮れてあてもなくぶらぶらと二条院をうろつきながら西の対に向かった。
5.源氏は藤壺宮との間に産まれた御子に対する罪悪感から、少しでも気を晴らしたかったので、二番目に愛している若紫との逢瀬に切り替えようとした。
【藤壺宮】と【若紫】は、「むらさき」のゆかりのある間柄です。
具体的に言うと、
若紫の父である兵部卿宮は、藤壺宮のお兄さんなのです。
したがって、顔もよく似ているうえ、
藤壺宮との縁にことよせる意味でも、
源氏は、藤壺宮の想いが募るたびに、
若紫のもとへ、逢いに行くのです。
『源氏物語』の、この背景知識を知っていれば、
このような心情問題が出題されたときにも、
その根本となる心情からズレずに解答できます。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【1】