源氏物語イラスト訳【紅葉賀109】さりぬべき隙
さりぬべき隙にやありけむ、御覧ぜさせて、
「ただ塵ばかり、この花びらに」
と聞こゆるを、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻り、源氏と藤壺は罪悪感に苛まれています。
源氏物語イラスト訳
さりぬべき隙にやありけむ、
訳)差し支えないよい機会であったのであろうか、
御覧ぜさせて、
訳)ご覧に入れて、
「ただ塵ばかり、この花びらに」と聞こゆるを、
訳)「ただほんの塵ほどのお返事だけでも、この花びらに…」と申し上げるが、
【古文】
さりぬべき隙にやありけむ、御覧ぜさせて、
「ただ塵ばかり、この花びらに」
と聞こゆるを、
【訳】
差し支えないよい機会であったのであろうか、ご覧に入れて、
「ただほんの塵ほどのお返事だけでも、この花びらに…」
と申し上げるが、
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■【さりぬべき】…さしつかえない。ふさわしい
※【ぬ】…強意の助動詞「ぬ」終止形
※【べき】…適当(当然)の助動詞「べし」連体形
■【隙(ひま)】…よい機会。すき間
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【や】…疑問の係助詞
■【あら】…ラ変動詞「あり」未然形
■【む】…推量の助動詞「む」連体形
■【御覧ぜさせ】…サ行下二段動詞「御覧ぜさす」連用形
※【御覧ず】…「見る」の尊敬(作者⇒藤壺宮)
※【させ】…使役の助動詞「さす」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【ただ】…ただひたすら
■【塵(ちり)】…ほんの塵のようなはかないもの
■【ばかり】…程度の副助詞
■【と】…引用の格助詞
■【聞こゆる】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連体形
※【きこゆ】…「言ふ」の謙譲語(王命婦⇒藤壺宮)
■【を】…逆接の接続助詞
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答え…【5】