源氏物語イラスト訳【紅葉賀102】帝の思い
「…されば、思ひわたさるるにやあらむ。いとよくこそおぼえたれ。いと小さきほどは、皆かくのみあるわざにやあらむ」
とて、いみじくうつくしと思ひきこえさせたまへり。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。
源氏物語イラスト訳
「…されば、思ひわたさるるにやあらむ。いとよくこそおぼえたれ。
訳)「…それだから、ずっと思ってしまうので あろうか。とてもよくお前と似ているぞ。
いと小さきほどは、皆かくのみあるわざにやあらむ」とて、
訳)とても幼いうちは、皆このようにばかりあることなのであろうか」と言って、
いみじくうつくしと思ひきこえさせたまへり。
訳)非常にかわいらしいとお思い申し上げあそばしている。
【古文】
「…されば、思ひわたさるるにやあらむ。いとよくこそおぼえたれ。いと小さきほどは、皆かくのみあるわざにやあらむ」とて、いみじくうつくしと思ひきこえさせたまへり。
【訳】
「…それだから、ずっと思ってしまうので あろうか。とてもよくお前と似ているぞ。とても幼いうちは、皆このようにばかりあることなのであろうか」と言って、非常にかわいらしいとお思い申し上げあそばしている。
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■【されば】…だから。それゆえ
■【~わたす】…ずっと~する。~し続ける
■「るる】…自発の助動詞「る」連体形
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【や】…疑問の係助詞
■【あら】…ラ変動詞「あり」未然形
■【む】…推量の助動詞「む」連体形
■【いと】…とても
■【よく】…ク活用形容詞「良し」連用形
■【こそ】…強意の係助詞(結び;「たれ」)
■【おぼえ】…ヤ行下二段動詞「おぼゆ」連用形
※【おぼゆ】…似ている
■【たれ】…完了(存続)の助動詞「たり」已然形
■【いと】…とても
■【小さき】…ク活用形容詞「小さし」連体形
■【ほど】…頃。とき
■【は】…取り立ての係助詞
■【かく】…このように
■【のみ】…限定の副助詞
■【ある】…ラ変動詞「あり」連体形
■【わざ】…こと
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【や】…疑問の係助詞
■【あら】…ラ変動詞「あり」未然形
■【む】…推量の助動詞「む」連体形
■【とて】…~と言って
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【いみじく】…シク活用形容詞「いみじ」連用形
■【うつくし】…かわいらしい
■【と】…引用の格助詞
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【させ】…尊敬の助動詞「さす」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒桐壺帝)
■【り】…完了(存続)の助動詞「り」終止形
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【大学入試予想:マーク問題】
「…されば、思ひわたさるるにやあらむ。いとよくこそおぼえたれ。いと小さきほどは、皆かくのみあるわざにやあらむ」
とて、いみじくうつくしと思ひきこえさせたまへり。
【問】 傍線部の説明として最も適当なものを選べ。
1.源氏は御子のことを非常にかわいいと思った
2.帝は御子のことを源氏に似てかわいいと思った
3.藤壺は御子のことを源氏に似てかわいいと思った
4.帝は御子のことを藤壺に似てかわいいと思った
5.藤壺は御子のことを非常にかわいいと思った
大学入試では、傍線部の訳出だけでなく、
主語や目的語も含めての内容理解もよく出題されます。
今回も、傍線部内の「うつくし」「きこゆ」「たまへり」などはそっちのけで、
だれが、だれをどう思ったのかが着眼点となっていますね。
『源氏物語』は、宮中が舞台の場面では、登場人物の多くが身分の高い人ばかりなので、
今回のような二方面敬語がよく出てきます。
人物関係をきちんと掌握するには、
背景知識も重要になってきますね。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【2】