源氏物語イラスト訳【紅葉賀103】中将の君
中将の君、面の色変はる心地して、恐ろしうも、かたじけなくも、うれしくも、あはれにも、かたがた移ろふ心地して、涙落ちぬべし。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。
源氏物語イラスト訳
中将の君、面の色変はる心地して、
訳)源氏の中将は、顔色が変っていく心持ちがして、
恐ろしうも、かたじけなくも、
訳)恐ろしくも、もったいなくも、
うれしくも、あはれにも、
訳)嬉しくも、しみじみ気の毒にも、
かたがた移ろふ心地して、涙落ちぬべし。
訳)あれこれと揺れ動く心持ちがして、涙が落ちてしまいそうである。
【古文】
中将の君、面の色変はる心地して、恐ろしうも、かたじけなくも、うれしくも、あはれにも、かたがた移ろふ心地して、涙落ちぬべし。
【訳】
源氏の中将は、顔色が変っていく心持ちがして、恐ろしくも、もったいなくも、嬉しくも、しみじみ気の毒にも、あれこれと揺れ動く心持ちがして、涙が落ちてしまいそうである。
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■【中将の君】…源氏の中将。光源氏のこと
■【は】…取り立ての係助詞
■「面(つら)の色】…顔色
■【心地(ここち)】…心持ち。気持ち
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【恐ろしう】…シク活用形容詞「おそろし」連用形ウ音便
■【も】…列挙の係助詞
■【かたじけなう】…ク活用形容詞「かたじけなし」連用形ウ音便
※【かたじけなし】…もったいない。ありがたい
■【うれしく】…シク活用形容詞「うれし」連用形
■【あはれに】…ナリ活用形容動詞「あはれなり」連用形
■【かたがた】…あれこれと
■【移ろふ】…移り変わる
■【心地(ここち)】…心持ち。気持ち
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【落ち】…タ行上二段動詞「落つ」連用形
■【ぬ】…強意の助動詞「ぬ」終止形
■【べし】…推量の助動詞「べし」終止形
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【大学入試予想:マーク問題】
中将の君、面の色変はる心地して、恐ろしうも、かたじけなくも、うれしくも、あはれにも、かたがた移ろふ心地して、涙落ちぬべし。
【問】 傍線部「ぬ」と同じ用法のものを1つ選べ。
1.風波やまねば、なほ同じ所にあり。
(土佐日記)
2.などかもののたまはぬ。
(大和物語)
3.涙落として、ほとびにけり。(伊勢物語)
4.四十に足らぬほどにて死なむこそめやすかるべけれ。(徒然草)
5.風も吹きぬべし』と騒げば、船に乗りなむとす。
(土佐日記)
【確述用法】は、大学入試頻出の文法事項です。
今回、「~ぬべし」とあることから、
強意の助動詞「ぬ」+スイカトメテの「べし」を併せた、確述用法の一部と捉えましょう。
完了の助動詞は、「べし」・「む」などの推量系統の助動詞と組み合わさって、【強意】の意味となります。
なお、理系の方や共通テストのみの受験生の方は、【強意】ではなく【完了】という意味で覚えておいても大丈夫です。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【5】