源氏物語イラスト訳【紅葉賀100】やむごとなき御腹
「かうやむごとなき御腹に、同じ光にてさし出でたまへれば、疵なき玉」と思しかしづくに、宮はいかなるにつけても、胸のひまなく、やすからずものを思ほす。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。
源氏物語イラスト訳
「かうやむごとなき御腹に、同じ光にてさし出でたまへれば、
訳)「このように高貴なお方の御腹から、源氏と同じように光り輝いて生まれなさったので、
疵なき玉」と思しかしづくに、
訳)欠点のない玉のような御子だ」と、お思いあそばし大切に慈しむので、
宮はいかなるにつけても、胸のひまなく、
訳)藤壺宮は何事につけても、胸の痛みの消える間もなく、
やすからずものを思ほす。
訳)心穏やかでなく物思いをしていらっしゃる。
【古文】
「かうやむごとなき御腹に、同じ光にてさし出でたまへれば、疵なき玉」と思しかしづくに、宮はいかなるにつけても、胸のひまなく、やすからずものを思ほす。
【訳】
「このように高貴なお方の御腹から、源氏と同じように光り輝いて生まれなさったので、欠点のない玉のような御子だ」と、お思いあそばし大切に慈しむので、藤壺宮は何事につけても、胸の痛みの消える間もなく、心穏やかでなく物思いをしていらっしゃる。
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■【かう】…このように(「かく」のウ音便)
■【やむごとなき】…ク活用形容詞「やむごとなし」連体形
※「やむごとなし】…高貴だ
■【御腹(おんはら)】…敬うべき女性のお腹。またそのお腹から産まれた子
■【に】…対象の格助詞
■【同じ光】…源氏と同様に光り輝いて美しい様子
■【にて】…状態の格助詞
■【さし出づ】…生まれ出る
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒御子)
■【れ】…完了の助動詞「り」の已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【疵(きず)】…欠点
■【なき】…ク活用形容詞「無し」連体形
■【玉(たま)】…宝玉(御子の比喩)
■【と】…引用の格助詞
■【思し】…サ行四段動詞「おぼす」連用形
※【おぼす】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒桐壺帝)
■【かしづく】…大切に養育する。慈しむ
■【に】…順接の接続助詞
■【宮(みや)】…藤壺宮
■【は】…取り立ての係助詞
■【いかなる】…ナリ活用形容動詞「いかなり」連体形
■【に】…対象の格助詞
■【つけ】…カ行下二段動詞「付く」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【も】…強意の係助詞
■【胸のひま(隙)】…胸の痛みの消えるすき間
■【なく】…ク活用形容詞「無し」連用形
■【ものを思ほす】…もの思いにふけっていらっしゃる
※【思ほす】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒藤壺宮)
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【大学入試予想:マーク問題】
「かうやむごとなき御腹に、同じ光にてさし出でたまへれば、疵なき玉」と思しかしづくに、宮はいかなるにつけても、胸のひまなく、やすからずものを思ほす。
【問】 傍線部の説明として最も適当なものを選べ。
1.光源氏の出生がすばらしいということ
2.藤壺の出生がすばらしいということ
3.御子がこの上なく美しいということ
4.帝の寵愛がすばらしいということ
5.御子が高貴な藤壺から産まれたということ
【御腹】というのは、高貴な女性のお腹という意味です。
転じて、高貴な女性のお腹から産まれた御子という意味にもなります。
「やむごとなし」は、「高貴な」という意味ですが、
同じ高貴の「あてなり」と比べて、それ以上の最上級の高貴を指します。
つまり、藤壺宮から産まれた御子のことを言っているんですね。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
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答え…【5】