源氏物語イラスト訳【紅葉賀86】御心の鬼
宮の、御心の鬼にいと苦しく、「人の見たてまつるも、あやしかりつるほどのあやまりを、まさに人の思ひとがめじや。…」
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。朱雀院行幸で、源氏は美しい「青海波」の舞を披露し、昇進しました。一方、藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。
源氏物語イラスト訳
宮の、御心の鬼にいと苦しく、
訳)藤壺宮が、良心の呵責にとても苦しく、
「人の見たてまつるも、あやしかりつるほどのあやまりを、
訳)「まわりの人が 拝見しても、変であった妊娠期間の狂いを、
まさに人の思ひとがめじや。…」
訳)今まさに人々は怪しまないだろうか、いやきっと怪しんでいるだろう。…」
【古文】
宮の、御心の鬼にいと苦しく、「人の見たてまつるも、あやしかりつるほどのあやまりを、まさに人の思ひとがめじや。…」
【訳】
藤壺宮が、良心の呵責にとても苦しく、「まわりの人が 拝見しても、変であった妊娠期間の狂いを、今まさに人々は怪しまないだろうか、いやきっと怪しんでいるだろう。…」
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■【宮(みや)】…藤壺宮
■【の】…主格の格助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒藤壺宮)
■【心の鬼】…良心の呵責
■【に】…原因の格助詞
■【いと】…とても
■【苦しく】…ク活用形容詞「苦し」連用形
■【人】…女房やまわりの人々
■【の】…主格の格助詞
■【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
■【たてまつる】…謙譲の補助動詞(藤壺宮⇒人々)
■【も】…強意の係助詞
■【あやしかり】…ク活用形容詞「あやし」連用形
※【あやし】…変だ。不審に思う
■【つる】…完了の助動詞「つ」連体形
■【ほど】…時。程度。ここでは妊娠期間のこと
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【あやまり】…(月勘定の)狂い
■【を】…対象の格助詞
■【まさに】…今まさに
■【人】…世間の人々。まわりの女房たち
■【の】…主格の格助詞
■【思ひとがむ】…気にとめる。あやしむ
■【じ】…打消推量の助動詞「じ」終止形
■【や】…反語の係助詞
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【大学入試予想:マーク問題】
宮の、御心の鬼にいと苦しく、「人の見たてまつるも、あやしかりつるほどのあやまりを、まさに人の思ひとがめじや。さらぬはかなきことをだに、疵を求むる世に、いかなる名のつひに漏り出づべきにか」と思しつづくるに、身のみぞいと心憂き。
【問】 傍線部の説明として最も適当なものを選べ。
1.藤壺宮の疑心暗鬼
2.藤壺宮の良心の呵責
3.藤壺宮のよこしまな気持ち
4.産まれた男宮の苦悩
5.産まれた男宮の行く末の不安
「心の鬼」とは、
⑴ よこしまな気持ち。邪心
⑵ 良心の呵責
ここでは、藤壺は源氏との不義密通の末に産まれた御子のことで苦しんでいます。
このような状況まで考慮して、比喩表現は文脈判断すべきですね。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【2】