源氏物語イラスト訳【紅葉賀87】疵を求むる世
「…さらぬはかなきことをだに、疵を求むる世に、いかなる名のつひに漏り出づべきにか」と思しつづくるに、身のみぞいと心憂き。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。朱雀院行幸で、源氏は美しい「青海波」の舞を披露し、昇進しました。一方、藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。
源氏物語イラスト訳
「…さらぬはかなきことをだに、疵を求むる世に、
訳)「…そうでないちょっとしたことでさえも、欠点を探し求める世の中なのに、
いかなる名のつひに漏り出づべきにか」
訳)どのような噂がしまいには漏れ出すはずのことであろうか」
と思しつづくるに、身のみぞいと心憂き。
訳)と思い続けなさると、わが身だけがとても情けない。
【古文】
「…さらぬはかなきことをだに、疵を求むる世に、いかなる名のつひに漏り出づべきにか」と思しつづくるに、身のみぞいと心憂き。
【訳】
「…そうでないちょっとしたことでさえも、欠点を探し求める世の中なのに、どのような噂がしまいには漏れ出すはずのことであろうか」と思い続けなさると、わが身だけがとても情けない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【さらぬ】…そうでない
■【はかなき】…ク活用形容詞「はかなし」連体形
※【はかなし】…ちょっとした。つまらない
■【を】…対象の格助詞
■【だに】…類推の副助詞
■【疵(きず)】…欠点
■【を】…対象の格助詞
■【求むる】…マ行下二段動詞「もとむ」連体形
※【求む】…さがし求める
■【世(よ)】…世の中
■【に】…時の格助詞
■【いかなる】…どのような
■【名(な)】…名声。噂。評判
■【の】…主格の格助詞
■【つひに】…しまいには
■【漏れ出(い)づ】…ダ行下二段動詞「もれいづ」終止形
■【べき】…当然の助動詞「べし」連体形
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【か】…疑問の係助詞(結び「あらむ」の省略
■【と】…引用の格助詞
■【思しつづくる】…カ行下二段動詞「おぼしつづく」連体形
※【思ひ続く】…思い続ける
※【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒藤壺宮)
■【に】…単純接続の接続助詞
■【身(み)】…わが身(藤壺宮自身)
■【のみ】…限定の副助詞
■【ぞ】…強意の係助詞(結び:心憂き)
■【いと】…とても
■【心憂き】…ク活用形容詞「こころうし」連体形
※【こころうし】…つらい。情けない
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【大学入試予想:マーク問題】
「…さらぬはかなきことをだに、疵を求むる世に、いかなる名のつひに漏り出づべきにか」と思しつづくるに、身のみぞいと心憂き。
【問】 傍線部の心情として最も適当なものを選べ
1.御子も産まれたことだから、この不義密通の事実をいつか帝に打ち明けなければならないと、覚悟を決めて状況を受け入れている。
2.自分ひとりがこんなに苦しむなんて、不条理な世の中であると、感慨深く思いつつも、このような仕打ちをした光源氏を恨んでいる。
3.前世からの因縁は避けられないのが世の常だから、源氏との不義は、不可避の運命として受け入れるべきだと気持ちを切り替えている。
4.ちょっとしたことでさえ噂になる世の中なのに、源氏との不義はいつか漏れてしまうにちがいないと、どうしようもなく心をいためている。
5.恋愛のことでなくても世の中には様々な苦悩があるのだから、あえて源氏とのことで苦しまないようにしようと気丈にふるまっている。
「心憂し」は
⑴ つらい
⑵ いやだ
⑶ 情けない
というマイナス・イメージの多義語です。
このように心情を読解するときは、直前・直後の会話文や心中会話文などをきちんと訳して、内容を正確につかみ取りましょう。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【4】