源氏物語イラスト訳【末摘花209】あさましの口つきや☆
「さても、あさましの口つきや。これこそは手づからの御ことの限りなめれ。侍従こそとり直すべかめれ。また、筆のしりとる博士ぞなかべき」と、言ふかひなく思す。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)と逢瀬を迎えた光源氏。返歌もできない教養のなさや、雪明かりの朝に見た彼女の容貌に驚き、幻滅します。しかし、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めました。光源氏19歳の年末のとある日、宮中の宿直所に大輔命婦が訪ねて来て、末摘花の恋文を源氏に渡します。
源氏物語イラスト訳
「さても、あさましの口つきや。
訳)「それにしても、驚きあきれた 詠みぶりだなぁ。
これこそは手づからの御ことの限りなめれ。
訳)これこそが自分自身での御歌の限度であるようだ。
侍従こそとり直すべかめれ。
訳)侍従が直すべきところのようなのに。
また、筆のしりとる博士ぞなかべき」と、言ふかひなく思す。
訳)他に、詩歌の添削をしてくれる指導者がいないのだろう」と、何とも言いようなくお思いになる。
【古文】
「さても、あさましの口つきや。これこそは手づからの御ことの限りなめれ。侍従こそとり直すべかめれ。また、筆のしりとる博士ぞなかべき」と、言ふかひなく思す。
【訳】
「それにしても、驚きあきれた 詠みぶりだなぁ。これこそが自分自身での御歌の限度であるようだ。侍従が直すべきところのようだ。他に、詩歌の添削をしてくれる指導者がいないのだろう」と、何とも言いようなくお思いになる。
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■【さても】…それにしても
■【あさまし】…驚きあきれた(形容詞語幹用法)
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【口つき】…歌の詠みぶり
■【や】…詠嘆の間投助詞
■【これ】…指示代名詞。末摘花の和歌をさす
■【こそ】…強意の係助詞(結び;「めれ」)
■【手づから】…自分自身で
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(光源氏⇒末摘花)
■【こと(言)】…言葉。和歌
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【限り】…限度
■【な】…断定の助動詞「なり」連体形撥音便無表記
■【めれ】…推定の助動詞「めり」已然形
■【侍従(じじゅう)】…末摘花お付きの女房
■【こそ】…強意の係助詞(結び;「めれ」)
■【とり直す】…直す(「とり」は接頭語)
■【べか】…当然の助動詞「べし」連体形撥音便の無表記
■【めれ】…推定の助動詞「めり」已然形
■【また】…他に
■【筆の尻取る(ふでのしりとる)】…詩歌の指導や添削をする
■【博士(はかせ)】…その道の指導者
■【ぞ】…強意の係助詞(結び;「べき」)
■【なか】…ク活用形容詞「無し」連体形撥音便無表記
■【べき】…推量の助動詞「べし」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【言ふかひなく】…ク活用形容詞「言ふかひなし」連用形
※【言ふかひなし】…言葉にできない。どうしようもない
■【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
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