源氏物語イラスト訳【末摘花210】命婦の赤面☆
心を尽くして詠み出でたまひつらむほどを思すに、
「いともかしこき方とは、これをも言ふべかりけり」
と、ほほ笑みて見たまふを、命婦、面赤みて見たてまつる。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)と逢瀬を迎えた光源氏。返歌もできない教養のなさや、雪明かりの朝に見た彼女の容貌に驚き、幻滅します。しかし、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めました。光源氏19歳の年末のとある日、宮中の宿直所に大輔命婦が訪ねて来て、末摘花の恋文を源氏に渡します。
源氏物語イラスト訳
心を尽くして詠み出でたまひつらむほどを思すに、
訳)精魂こめて詠み出しなさったような状況を想像なさると、
「いともかしこき方とは、これをも言ふべかりけり」
訳)「非常に恐れ多いこととは、こういうことを 言うのだろうなぁ」
と、ほほ笑みて見たまふを、
訳)と、ニヤニヤしてご覧になるのを、
命婦、面赤みて見たてまつる。
訳)大輔命婦は、赤面して拝見する。
【古文】
心を尽くして詠み出でたまひつらむほどを思すに、
「いともかしこき方とは、これをも言ふべかりけり」
と、ほほ笑みて見たまふを、命婦、面赤みて見たてまつる。
【訳】
精魂こめて詠み出しなさったような状況を想像なさると、
「非常に恐れ多いこととは、こういうことを 言うのだろうなぁ」
と、ニヤニヤしてご覧になるのを、命婦は、赤面して拝見する。
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■【心を尽くす】…精魂こめる
■【て】…単純接続の接続助詞
■【詠み出で】…ダ行下二段動詞「詠み出づ」連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒末摘花)
■【つ】…完了の助動詞「つ」終止形
■【らむ】…現在の婉曲の助動詞「らむ」連体形
■【ほど】…状況
■【を】…対象の格助詞
■【思す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【いとも】…非常に(「も」は強意の係助詞)
■【かしこき】…ク活用形容詞「かしこし」連体形
※【かしこし】…恐れ多い
■【方(かた)】…こと。方面
■【と】…引用の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【これ】…指示代名詞。末摘花の源氏に対する精一杯の思い
■【を】…対象の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【言ふ】…ハ行四段動詞「言ふ」終止形
■【べかり】…推量の助動詞「べし」連用形
■【けり】…詠嘆の助動詞「けり」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【ほほ笑み】…マ行四段動詞「ほほゑむ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【見たまふ】…ご覧になる
※【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【を】…対象の格助詞
■【命婦】…大輔命婦(たいふのみょうぶ)。光源氏の乳母子
■【面赤む】…赤面する
※【面(おもて)】…顔
※【赤み】…マ行四段動詞「あかむ」連用形
■【見たてまつる】…拝見する
※【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
※【たてまつる】…謙譲の補助動詞(作者⇒光源氏)
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【本日の源氏物語】
「かしこし」は古今多義語です。
末摘花の、精魂込めて源氏に下手な和歌やへんな衣装を贈るような「方(方面)」に対して、源氏は「かしこし(=恐れ多い)」と表現しているのですね。
また、命婦の「面赤み(赤面)」は、どんな気持ちなんでしょう?
① 末摘花の歌のひどさに恥じ入っている
② 光源氏の微笑む顔を見てぽうっとなっている
③ 光源氏と末摘花の手引きをしている自分を恥じている
今回、イラスト訳では②の意味で捉えました。
皆さんも、想像を広げてもらえればなと思います。
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