源氏物語イラスト訳【末摘花163】愁ふ雪~「なり」の識別
いとど、愁ふなりつる雪、かきたれいみじう降りけり。空の気色はげしう、風吹き荒れて、大殿油消えにけるを、灯もしつくる人もなし。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)との初夜を終えた光源氏。なんだか思っていたのと違って、幻滅したものの、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏は気持ちが向かないけれども、彼女の人となりを確かめようと、逢いに行きます。
源氏物語イラスト訳
いとど、愁ふなりつる雪、かきたれいみじう降りけり。
訳)ますます、嘆きの種であると言っていた雪が、ひどく激しく降って来た。
空の気色はげしう、風吹き荒れて、
訳)空模様は険しく、風が吹き荒れて、大殿油が消えてしまったのに、
大殿油消えにけるを、灯もしつくる人もなし。
訳)点し直す人もいない。
【古文】
いとど、愁ふなりつる雪、かきたれいみじう降りけり。空の気色はげしう、風吹き荒れて、大殿油消えにけるを、灯もしつくる人もなし。さまを、いと埋れすくよかにて、何の栄えなきをぞ、口惜しう思す。
【訳】
ますます、嘆きの種であると言っていた雪が、ひどく激しく降って来た。空模様は険しく、風が吹き荒れて、大殿油が消えてしまったのに、点し直す人もいない。
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■【いとど】…ますます
■【愁ふ】…嘆く。心配する。愚痴をこぼす
■【なり】…伝聞の助動詞「なり」連用形
■【つる】…完了の助動詞「つ」連体形
■【かきたれ】…ラ行下二段動詞「かきたる」連用形
※【かきたる】…激しく降る
■【いみじく】…シク活用形容詞「いみじ」連用形
※【いみじ】…ひどい
■【降り】…ラ行四段動詞「降る」連用形
■【けり】…過去の助動詞「けり」終止形
■【空の気色(けしき)】…空模様
■【はげしう】…シク活用形容詞「はげし」連用形ウ音便
■【吹き荒れ】…ラ行下二段動詞「吹き荒る」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【大殿油(おおとなぶら)】…御殿の灯台(とうだい)にともす、油を用いた灯火
■【消え】…ヤ行下二段動詞「消ゆ」連用形
■【に】…完了の助動詞「ぬ」連用形
■【ける】…過去の助動詞「けり」連体形
■【を】…逆接の接続助詞
■【灯しつくる】…カ行下二段動詞「灯しつく」連体形
※【灯しつく】…灯火に点しつける。火を灯し直す
■【も】…強意の係助詞
■【なし】…ク活用形容詞「なし」終止形
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