源氏物語イラスト訳【末摘花164】物の怪に襲われた時のこと
かの、ものに襲はれし折思し出でられて、荒れたるさまは劣らざめるを、ほどの狭う、人気のすこしあるなどに慰めたれど、すごう、うたていざとき心地する夜のさまなり。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)との初夜を終えた光源氏。なんだか思っていたのと違って、幻滅したものの、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏は気持ちが向かないけれども、彼女の人となりを確かめようと、逢いに行きます。
源氏物語イラスト訳
かの、ものに襲はれし折思し出でられて、
訳)あの、物の怪に襲われた時を思い出しなさらずにいられなくて、
荒れたるさまは劣らざめるを、
訳)荒れた様子はあの時に劣らないようだが、
ほどの狭う、人気のすこしあるなどに慰めたれど、
訳)場所が狭く、人けが少しあるなどで気が紛れていたけれど、
すごう、うたていざとき心地する夜のさまなり。
訳)ぞっとするように、気味悪く寝つかれそうにない感じのする夜の様子である。
【古文】
かの、ものに襲はれし折思し出でられて、荒れたるさまは劣らざめるを、ほどの狭う、人気のすこしあるなどに慰めたれど、すごう、うたていざとき心地する夜のさまなり。
【訳】
あの、物の怪に襲われた時を思い出しなさらずにいられなくて、荒れた様子はあの時に劣らないようだが、場所が狭く、人けが少しあるなどで気が紛れていたけれど、ぞっとするように、気味悪く寝つかれそうにない感じのする夜の様子である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【かの】…あの
■【もの】…ここでは、物の怪の意
■【に】…受身の対象の格助詞
■【襲は】…ハ行四段動詞「おそふ」未然形
■【れ】…受身の助動詞「る」連用形
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【折(をり)】…時
■【思し出で】…ダ行下二段動詞「思し出づ」未然形
※【おぼしいづ】…「思ひ出づ」の尊敬(作者⇒光源氏)
■【られ】…自発の助動詞「らる」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【荒れ】…ラ行下二段動詞「荒る」連用形
■【たる】…完了の助動詞「たり」連体形
■【さま】…様子
■【は】…取り立ての係助詞
■【劣ら】…ラ行四段動詞「劣る」未然形
■【ざ】…打消の助動詞「ず」連体形撥音便無表記
■【める】…推定の助動詞「めり」連体形
■【を】…逆接の接続助詞
■【ほど】…場所
■【の】…主格の格助詞
■【狭う】…ク活用形容詞「せばし」連用形ウ音便
■【人気(ひとげ)】…人のいる気配
■【の】…主格の格助詞
■【すこし】…少し(副詞)
■【ある】…ラ変動詞「あり」連体形
■【など】…例示の副助詞
■【に】…対象の格助詞
■【慰め】…マ行下二段動詞「なぐさむ」連用形
※【慰む】…気が紛れる
■【たれ】…完了の助動詞「たれ」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【すごう】…ク活用形容詞「すごし」連用形ウ音便
※【すごし】…ぞっとするようだ
■【うたて】…気味が悪い
■【いざとき】…ク活用形容詞「いざとし」連体形
※【いざとし】…目が覚めやすい。眠れそうにない
■【心地】…感じ。心持ち
■【する】…サ変動詞「す」連体形
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【さま】…様子
■【なり】…断定の助動詞「なり」終止形
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。