源氏物語イラスト訳【末摘花162】ひなびたる侍従
「そそや」など言ひて、火とり直し、格子放ちて入れたてまつる。
侍従は、斎院に参り通ふ若人にて、この頃はなかりけり。いよいよあやしう、ひなびたる限りにて、見ならはぬ心地ぞする。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)との初夜を終えた光源氏。なんだか思っていたのと違って、幻滅したものの、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏は気持ちが向かないけれども、彼女の人となりを確かめようと、逢いに行きます。
源氏物語イラスト訳
「そそや」など言ひて、火とり直し、
訳)「あれまぁ!」などと言って、灯火を入れ直し、
格子放ちて入れたてまつる。
訳)格子戸を開放してお入れ申し上げる。
侍従は、斎院に参り通ふ若人にて、この頃はなかりけり。
訳)侍従は、斎院にお勤めする若い女房であって、最近はいないのであった。
いよいよあやしう、ひなびたる限りにて、見ならはぬ心地ぞする。
訳)ますます奇妙で、野暮ったい 分際ばかりであって、見慣れない感じがする。
【古文】
「そそや」など言ひて、火とり直し、格子放ちて入れたてまつる。
侍従は、斎院に参り通ふ若人にて、この頃はなかりけり。いよいよあやしう、ひなびたる限りにて、見ならはぬ心地ぞする。
【訳】
「あれまぁ!」などと言って、灯火を入れ直し、格子戸を開放してお入れ申し上げる。
侍従は、斎院にお勤めする若い女房であって、最近はいないのであった。ますます奇妙で、野暮ったい 分際ばかりであって、見慣れない感じがする。
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■【そそや】…あれまあ
■【など】…引用の副助詞
■【言ひ】…ハ行四段動詞「言ふ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【火】…灯火
■【とり直し】…サ行四段動詞「とり直す」連用形
■【格子】…格子戸。蔀
■【放(はな)ち】…タ行四段動詞「はなつ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【入れ】…ラ行下二段動詞「入る」連用形
■【聞き】…カ行四段動詞「聞く」連用形
■【たてまつる】…謙譲の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【侍従(じじゅう)】…末摘花お付きの女房の一人
■【は】…取り立ての係助詞
■【斎院(さいいん)】…斎院の御所。京都の紫野にあった
■【に】…場所の格助詞
■【参り通ふ】…お勤めする
※【参る】…「行く」の謙譲(作者⇒斎院)
※【通ふ】…行き来する
■【若人(わかうど)】…若い女房
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【この頃】…近ごろ
■【は】…取り立ての係助詞
■【なかり】…ク活用形容詞「なし」連用形
■【けり】…過去の助動詞「けり」終止形
■【いよいよ】…ますます
■【あやしう】…シク活用形容詞「あやし」連用形ウ音便
※【あやし】…奇妙だ
■【ひなび】…バ行上二段動詞「ひなぶ」連用形
※【ひなぶ】…田舎じみる。やぼったい
■【たる】…完了の助動詞「たり」連体形
■【限り】…それだけ。分際ばかり
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【見ならは】…ハ行四段動詞「みならふ」未然形
※【見ならふ】…見慣れる
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【心地】…感じ。心持ち
■【ぞ】…強意の係助詞(結び;「する」)
■【する】…サ変動詞「す」連体形
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