源氏物語イラスト訳【末摘花136】不器用な末摘花 | 【受験古文速読法】源氏物語イラスト訳

源氏物語イラスト訳【末摘花136】不器用な末摘花

紫の紙の、年経にければ、灰おくれ古めいたるに、手はさすがに文字強う、中さだの筋にて、上下等しく書いたまへり。

 

【これまでのあらすじ】

故常陸宮の姫君(末摘花)との初夜を終えた光源氏。なんだか思っていたのと違って、幻滅し、翌日は足が向かず、手紙だけを送ります。

 

 

源氏物語イラスト訳 

 

 

紫の紙けれ灰おくれ古めいたる

訳)紫色の紙年数経ってしまっので色あせて古くなっ

 

 

さすがに文字強う中さだにて

訳)筆跡そうはいってもやはり文字の印象はしっかりと、中古風書体

 

 

上下等しく書いたまへ

訳)上の句と下の句との天地を揃えて書きなさっている

 

 

【古文】

紫の紙けれ灰おくれ古めいたるさすがに文字強う中さだにて上下等しく書いたまへ

 

【訳】

紫色の紙年数経ってしまっので色あせて古くなっ筆跡そうはいってもやはり文字の印象はしっかりと、中古風書体上の句と下の句との天地を揃えて書きなさっている

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■【紫の紙】…紫色の和紙

■【の】…同格の格助詞

■【灰おくる】…紫色を染めるのに使った椿(つばき)の灰の効力がなくなり、紫の色があせる

■【古めい】…カ行四段動詞「古(ふる)めく」連用形イ音便

※【古(ふる)めく】…古くなる。古びる

■【たる】…存続の助動詞「たり」連体形

■【に】…対象の格助詞

■【手(て)】…筆跡

■【は】…取り立ての係助詞

■【さすがに】…ナリ活用形容動詞「さすがなり」連用形

※【さすがなり】…そうはいってもやはり

■【強う】…ク活用形容詞「強し」連用形ウ音便

■【中さだ】…筆跡などが古風でも近代風でもなく中期の様式であること。一説に、上手でもなく下手でもなく中等であること

■【の】…連体修飾格の格助詞

■【筋(すぢ)】…風。系統

■【にて】…手段の格助詞

■【上下等しく】…散らし書きにせず、上下をそろえて

■【書い】…カ行四段動詞「書く」連用形イ音便

■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形

※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒末摘花)

■【り】…存続の助動詞「り」終止形

 

重要古語一覧はこちら

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【本日の源氏物語】

 

末摘花の返歌の書きぶりです。

 

「紫の紙」は、風情のある和紙ですが、「灰おくれ」とあります。古びて白茶けてしまっているのですね;;

 

そんな紙に、どんな筆跡で書いたかというと…

「手はさすがに文字強う、中さだの筋にて」とあります。「中さだ」というのは、中期の様式と辞書にはありますが、ここでは直前との単純接続から、当世風の国風文化の書体ではなく、古めかしい中国風の書体をさすのでしょう。

 

 

また、「上下等しく」というのは、当世風の散らし書きにはせず、天地をそろえて、上の句と下の句を並べて書いているってところでしょうか。

 

…とにかく、不器用なんですよね~;;

 

笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

 

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