源氏イラスト訳【末摘花10】乳母子
左衛門の乳母とて、大弐のさしつぎに思いたるが女、大輔の命婦とて、内裏にさぶらふ、わかむどほりの兵部大輔なる女なりけり。
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【源氏物語イラスト訳】
左衛門の乳母とて、大弐のさしつぎに思いたる
訳)左衛門の乳母といって、大弍の乳母の次に大切に思っていらっしゃる者
が女、大輔の命婦とて、内裏にさぶらふ、
訳)の娘で、大輔の命婦といって、宮中にお仕えする者は、
わかむどほりの兵部大輔なる女なりけり。
訳)だいたいにおいて、すっかり忘れることなど、でき なさらないのであった。
【古文】
左衛門の乳母とて、大弐のさしつぎに思いたるが女、大輔の命婦とて、内裏にさぶらふ、わかむどほりの兵部大輔なる女なりけり。
【訳】
左衛門の乳母といって、大弍の乳母の次に大切に思っていらっしゃる者の娘で、大輔の命婦といって、宮中にお仕えする者は、皇族の血筋を引く、兵部大輔という人の娘であった。
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■【左衛門の乳母(めのと)】…光源氏の乳母の一人
■【とて】…といって。として
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【大弐(だいに)】…大弐の乳母(めのと)。惟光の母。
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【さしつぎ】…すぐ次
■【に】…資格の格助詞
■【思(おぼ)い】…サ行四段動詞「思す」連用形イ音便
※【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【たる】…存続の助動詞「たり」連体形
■【が】…連体修飾格の格助詞
■【女(むすめ)】…娘
■【大輔(たいふ)の命婦(みやうぶ)】…左衛門乳母の娘。光源氏の乳母子の一人
■【とて】…といって。として
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【内裏(だいり)】…宮中
■【に】…場所の格助詞
■【さぶらふ】…「仕ふ」の謙譲語(作者⇒桐壺帝)
■【わかむ(ん)どほり】…皇族の血統を引く
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【兵部大輔(ひょうぶたいふ)】…兵部省の次官
■【なる】…所在の助動詞「なり」連体形
■【女(むすめ)】…娘
■【なり】…断定の助動詞「なり」連用形
■【けり】…過去の助動詞「けり」終止形
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さあここで、新しい女房が登場します。
ちょっとややこしいので、整理しましょう。
「大弐の乳母(めのと)」を覚えているでしょうか?
惟光のお母上ですね。
もう亡くなってるのかな…?
当時は、乳母(めのと)は、一人とは限らなかったみたいですね。
光源氏が、この大弐の乳母の次に慕っている乳母で、
「左衛門の乳母」という人が出てきました。
彼女の娘が、今回登場する、「大輔の命婦」なのです。
つまり、
惟光と同様、
光源氏の乳母子というわけです。