源氏イラスト訳【末摘花11】大輔命婦
いといたう色好める若人にてありけるを、君も召し使ひなどしたまふ。母は筑前守の妻にて、下りにければ、父君のもとを里にて行き通ふ。
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【源氏物語イラスト訳】
いといたう色好める若人にてありけるを、
訳)とてもすごく恋愛に洗練された若女房であったのを、
君も召し使ひなどしたまふ。
訳)源氏の君も召し使ったりなどしていらっしゃる。
母は筑前守の妻にて、下りにければ、
訳)母親は、筑前守の妻として、地方に下ってしまったので、
父君のもとを里にて行き通ふ。
訳)父兵部大輔の家を里家にして通っている。
【古文】
いといたう色好める若人にてありけるを、君も召し使ひなどしたまふ。母は筑前守の妻にて、下りにければ、父君のもとを里にて行き通ふ。
【訳】
とてもすごく恋愛に洗練された若女房であったのを、源氏の君も召し使ったりなどしていらっしゃる。母親は、筑前守の妻として、地方に下ってしまったので、父兵部大輔の家を里家にして通っている。
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■【いと】…とても
■【いたう】…ク活用形容詞「いたし」連用形ウ音便
※【いたし】…ひどい。はなはだしい
■【色好め】…マ行四段動詞「色好む」已然形
※【色好む】…洗練された恋愛をする
■【る】…完了の助動詞「り」連体形
■【若人(わこうど)】…若い女房
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【あり】…ラ変動詞「あり」連用形
■【ける】…過去の助動詞「けり」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【君(きみ)】…源氏の君。光源氏のこと
■【も】…添加の係助詞
■【召し使ひ】…お呼び寄せになって雑用などをさせること
※【召す】…「呼ぶ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【など】…例示の副助詞
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【母】…大輔命婦の母。左衛門の乳母のこと
■【は】…取り立ての係助詞
■【筑前守(ちくぜんのかみ)】…福岡県北部の国守
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【妻】…ここでは、再婚した意
■【にて】…資格の格助詞
■【下り】…ラ行四段動詞「下る」連用形
※【下(くだ)る】…地方に下る。赴任する
■【に】…完了の助動詞「ぬ」連用形
■【けれ】…過去の助動詞「けり」已然形
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
■【父君】…大輔命婦の実父。兵部大輔をさす。
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【もと】…(人のいる)所
■【を】…対象の格助詞
■【里(さと)】…里家。実家
■【にて】…資格の格助詞
■【行き通ふ】…行き来する。往来する
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大輔命婦の話の続きです。
光源氏の乳母であった、左衛門の乳母。
今は、再婚して、筑前守について、地方にいるみたいです。
なので、大輔命婦は、実父である兵部大輔の所に住んでいるようです。
兵部大輔は、皇族の血統なので、
彼女も、「色好める」と評価されています。
彼女は、惟光と同様、光源氏の乳母子です。
「命婦」というのは、宮中の女官です。
桐壺帝の女の一人ですよね!
しかし、光源氏は、この命婦を、惟光と同様、召し使っているわけです。
…おそらく、肉体関係も、あったのではないかと…。