源氏イラスト訳【末摘花9】軒端荻
火影の乱れたりしさまは、またさやうにても見まほしく思す。おほかた、名残なきもの忘れをぞ、えしたまはざりける。
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【源氏物語イラスト訳】
火影の乱れたりしさまは、
訳)灯火に照らされた姿の乱れていた様子は、
またさやうにても見まほしく思す。
訳)もう一度そのようにでも逢いたくお思いになる。
おほかた、名残なきもの忘れをぞ、えしたまはざりける。
訳)だいたいにおいて、すっかり忘れることなど、でき なさらないのであった。
【古文】
火影の乱れたりしさまは、またさやうにても見まほしく思す。おほかた、名残なきもの忘れをぞ、えしたまはざりける。
【訳】
灯火に照らされた姿の乱れていた様子は、もう一度そのようにでも逢いたくお思いになる。だいたいにおいて、すっかり忘れることなど、でき なさらないのであった。
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■【火影(ほかげ)】…灯火に照らされた姿
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【乱れ】…ラ行下二段動詞「乱る」連用形
■【たり】…完了(存続)の助動詞「たり」連用形
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【さま】…ようす
■【は】…取り立ての係助詞
■【また】…もう一度
■【さやうに】…ナリ活用形容動詞「さやうなり」連用形
※【さやうなり】…そのようだ
■【て】…単純接続の接続助詞
■【も】…強意の係助詞
■【見】…マ行上一段動詞「見る」未然形
※【見る】…逢う。男女関係を結ぶ
■【まほしく】…希望の助動詞「まほし」連体形
■【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【おほかた】…総じて、大体において
■【名残なき】…ク活用形容詞「名残なし」連体形
※【名残なし】…跡形もない
■【もの忘れ】…忘れてしまうこと
■【を】…対象の格助詞
■【ぞ】…強意の係助詞(結び:「ける」)
■【え~ず】…~できない
※【え】…不可能を表す陳述の副詞
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ざり】…打消の助動詞「ず」連用形
■【ける】…過去の助動詞「けり」連体形
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「空蝉」を思い出してから、
「軒端荻」に気持ちがとびます。
「火影の乱れたりしさま」とは、
軒端荻が、空蝉と碁を打っている場面――。
かなり、しどけない姿でいたのを、
光源氏は垣間見たのでしたね。
(※詳しくはこちらの記事をご参照)