源氏イラスト訳【若紫362】隠忍
若君も、あやしと思して泣いたまふ。少納言、とどめきこえむかたなければ、昨夜縫ひし御衣どもひきさげて、自らもよろしき衣、着かへて、乗りぬ。
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【源氏物語イラスト訳】
若君も、あやしと思して泣いたまふ。
訳)若紫も、異常な事態だとお思いになって泣きなさる。
少納言、とどめきこえむかたなければ、
訳)少納言の乳母は、お止め申し上げるような方法もないので、
昨夜縫ひし御衣どもひきさげて、
訳)昨夜縫ったご衣装類をひっさげて、
自らもよろしき衣、着かへて、乗りぬ。
訳)自分自身も悪くない着物に着替えて、車に乗った。
【古文】
若君も、あやしと思して泣いたまふ。少納言、とどめきこえむかたなければ、昨夜縫ひし御衣どもひきさげて、自らもよろしき衣、着かへて、乗りぬ。
【訳】
若紫も、異常な事態だとお思いになって泣きなさる。少納言の乳母は、お止め申し上げるような方法もないので、昨夜縫ったご衣装類をひっさげて、自分自身も悪くない着物に着替えて、車に乗った。
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■【若宮(わかみや)】…若紫の姫宮のこと
■【も】…添加の係助詞
■【あやし】…おかしい。異常だ
■【と】…引用の格助詞
■【思(おぼ)し】…サ行四段動詞「思す」連用形
※【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒若紫)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【泣い】…カ行四段動詞「泣く」連用形イ音便
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【少納言】…若紫の侍従、少納言の乳母
■【とどめ】…マ行下二段動詞「とどむ」連用形
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」未然形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【む】…婉曲の助動詞「む」連体形
■【かた】…方法
■【なけれ】…ク活用形容詞「無し」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【縫ひ】…ハ行四段動詞「縫ふ」連用形
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【御衣(おんぞ)】…ご衣類
■【―ども】…複数の接尾語
■【ひきさげ】…ガ行下二段動詞「ひきさぐ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【自ら(みづから)】…自分自身
■【も】…添加の係助詞
■【よろしき】…シク活用形容詞「よろし」連体形
※【よろし】…悪くない
■【衣(きぬ)】…着物
■【着かへ】…ハ行下二段動詞「着替ふ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【乗り】…ラ行四段動詞「乗る」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
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少納言の反論むなしく、
光源氏の強引さには、勝てなかったようです。
ついて行ったのは、
やはり、少納言の乳母のようですね。
ちょうど、明日の引っ越しに備えて、
着物を縫っていたようなので、
(これ伏線にもありましたね)
それだけを持って、
隠忍自重の思いで、出立したようです。