源氏イラスト訳【若紫292】霰
霰降り荒れて、すごき夜のさまなり。
「いかで、かう人少なに心細うて、過ぐしたまふらむ」
と、うち泣いたまひて、いと見棄てがたきほどなれば、
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【源氏物語イラスト訳】
霰降り荒れて、すごき夜のさまなり。
訳)霰(あられ)が降って荒れていて、ぞっとするほどの夜の様子である。
「いかで、かう人少なに心細うて、過ぐしたまふらむ」
訳)「どうして、このように人けなく心細いままで、過ごしなさっているのだろうか、いやそんなままでいられるものではない」
と、うち泣いたまひて、いと見棄てがたきほどなれば、
訳)と、ふっと涙をこぼしなさって、とても見捨てては帰りにくい有様であるので、
【古文】
霰降り荒れて、すごき夜のさまなり。
「いかで、かう人少なに心細うて、過ぐしたまふらむ」
と、うち泣いたまひて、いと見棄てがたきほどなれば、
【訳】
霰(あられ)が降って荒れていて、ぞっとするほどの夜の様子である。
「どうして、このように人けなく心細いままで、過ごしなさっているのだろうか、いやそんなままでいられるものではない」
と、ふっと涙をこぼしなさって、とても見捨てては帰りにくい有様であるので、
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■【霰(あられ)】…ひょう。氷の塊が降ってくるもの
■【降り荒(あ)る】…降って荒れている
■【て】…単純接続の接続助詞
■【すごき】…ク活用形容詞「すごし」連体形
※【すごし】…ぞっとするほど寂しい。気味が悪い
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【さま】…ようす
■【なり】…断定の助動詞「なり」終止形
■【いかで】…どうして~か、いや~ない〈反語〉
■【かう】…このように
■【人少なに】…ナリ活用形容動詞「人少ななり」連用形
※【人少ななり】…人けがない。少人数である
■【心細う】…ク活用形容詞「心細し」連用形ウ音便
■【て】…単純接続の接続助詞
■【過ぐし】…サ行四段動詞「過ぐす」連用形
※【過(す)ぐす】…過ごす
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【らむ】…現在の原因推量の助動詞「らむ」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【うち泣く】…ふっと涙をこぼす。声をあげて泣く
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【いと】…とても
■【見棄て】…タ行下二段動詞「見棄つ」連用形
※【見棄(す)つ】…見捨てる。見捨てて帰る
■【―がたし】…~できない。~しにくい
■【ほど】…有様
■【なれ】…断定の助動詞「なり」已然形
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
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「霰(あられ)」というのは、
現在でいう「ひょう」の場合もさすようです。
ただでさえ、もの寂しい場所に「霰」までも降っていて、
女人たちの恐ろしさといったら、ないでしょうね。
光源氏は、それを思いやって
帰るに帰れないでいるのです。