源氏イラスト訳【若紫261】今生
「…かう問はせたまへるかしこまりは、この世ならでも、聞こえさせむ」
とあり。いとあはれと思す。
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【源氏物語イラスト訳】
「…かう問はせたまへるかしこまりは、
訳）「…このようにお見舞いくださったお礼は、
この世ならでも、聞こえさせむ」とあり。
訳）現世でなく（あの世から）でも、お返事を申し上げさせましょう」とある。
いとあはれと思す。
訳）とてもしみじみお気の毒なこと、とお思いになる。
【古文】
「…かう問はせたまへるかしこまりは、この世ならでも、聞こえさせむ」
とあり。いとあはれと思す。
【訳】
「…このようにお見舞いくださったお礼は、現世でなく（あの世から）でも、お返事を申し上げさせましょう」
とある。とてもしみじみお気の毒なこと、とお思いになる。
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■【かう】…「かく」のウ音便。このように
■【問は】…ハ行四段動詞「問ふ」未然形
※【問ふ】…訪問する。見舞う
■【せ】…尊敬の助動詞「す」連用形（最高敬語）
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞（少納言乳母⇒光源氏）
■【る】…完了の助動詞「り」連体形（準体法）
■【かしこまり】…お礼
■【は】…取り立ての係助詞
■【この世】…現世。生きている間
■【なら】…断定の助動詞「なり」連用形
■【で】…打消接続の接続助詞
■【も】…強意の係助詞
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」未然形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語（少納言乳母⇒光源氏）
■【させ】…使役の助動詞「さす」未然形
■【む】…意志の助動詞「む」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【あり】…ラ変動詞「あり」終止形
■【いと】…とても
■【あはれ】…しみじみ気の毒なこと
■【と】…引用の格助詞
■【思（おぼ）す】…「思ふ」の尊敬語（作者⇒光源氏）
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「聞こえさす」というのは、
これ一語で「言ふ」の謙譲語とも捉えられますが、
あの世へ逝ってから言いに来たら怖いので、
ここでは、いまわの際の遺言として
人を介して「申し上げる」の意と捉えたほうがいいでしょう。
…実際は、尼君は急死してしまうので、
若紫の今後のことを光源氏に託すこともできなかったわけですが…
