源氏イラスト訳【若紫250】漏聞
いと近ければ、心細げなる御声、絶え絶え聞こえて、
「いと、かたじけなきわざにもはべるかな。この君だに、かしこまりも聞こえたまうつべきほどならましかば」
とのたまふ。
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けっして面白いものではありませんが、
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【源氏物語イラスト訳】
いと近ければ、心細げなる御声、絶え絶え聞こえて、
訳)とても近いところなので、頼りなさそうな尼君のお声が、途切れ途切れに聞こえて、
「いと、かたじけなきわざにもはべるかな。
訳)「非常に、もったいないことで ございますわ。
この君だに、
訳)せめてこの姫君だけでも、
かしこまりも聞こえたまうつべきほどならましかば」とのたまふ。
訳)お礼をも申し上げなさってくれそうな年齢であったならば…」
とおっしゃる。
【古文】
いと近ければ、心細げなる御声、絶え絶え聞こえて、
「いと、かたじけなきわざにもはべるかな。この君だに、かしこまりも聞こえたまうつべきほどならましかば」
とのたまふ。
【訳】
とても近いところなので、頼りなさそうな尼君のお声が、途切れ途切れに聞こえて、
「非常に、もったいないことで ございますわ。せめてこの姫君だけでも、お礼をも申し上げなさってくれそうな年齢であったならば…」
とおっしゃる。
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■【いと】…とても
■【近けれ】…ク活用形容詞「近し」已然形
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
■【心細げなり】…頼りなさそうである
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒尼君)
■【絶(た)え絶(だ)え】…途切れ途切れに
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連用形
※【聞こゆ】…聞こえる
■【て】…単純接続の接続助詞
■【いと】…とても。非常に
■【かたじけなき】…ク活用形容詞「かたじけなし」連体形
※【かたじけなし】…もったいない
■【わざ】…こと
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【も】…強意の係助詞
■【はべる】…ラ変動詞「はべり」連体形
※【はべり】…「あり」の丁寧(尼君⇒光源氏)
■【かな】…詠嘆の終助詞
■【この君】…若紫のこと
■【だに】…最低限の希望の副助詞(せめて~だけでも)
■【かしこまり】…お礼
■【も】…強意の係助詞
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連用形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲(尼君⇒光源氏)
■【たまう】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形ウ音便
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【つ】…強意の助動詞「つ」終止形
■【べき】…推量の助動詞「べし」連体形
■【ほど】…年齢
■【なら】…断定の助動詞「なり」未然形
■【ましか】…反実仮想の助動詞「まし」未然形
■【ば】…順接仮定条件の接続助詞
■【と】…引用の格助詞
■【のたまふ】…「言ふ」の尊敬(作者⇒尼君)
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源氏物語イラスト訳の原文は、
こちらのサイトから引用させていただいております。
(渋谷栄一先生監修「源氏物語の世界」)
※フリー素材にしていただき、大変感謝しております。
明融臨模本を底本とされているそうです。
今回の箇所は、「この君だに、かしこまりも聞こえたまつべきほどならましかば」となっておりましたが、
「たまつ」を「たまうつ」と改編させていただきました。
「たま」は、「給ふ」の語幹のようですが、
大学受験生はちょっとわかりにくいので
「たまひ・つ」⇒「たまう・つ」⇒「たま・つ」の変化過程の
「たまうつ」にした次第です。