源氏物語イラスト訳【若紫173】聖の尊かりける
聖の尊かりけることなど、問はせたまふ。詳しく奏したまへば、「阿闍梨などにもなるべき者にこそあなれ。行ひの労は積もりて、朝廷にしろしめされざりけること」と、労たがりのたまはせけり。
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【源氏物語イラスト訳】
聖の尊かりけることなど、問はせたまふ。
訳)北山の聖が霊験あらたかであったことなどを、お尋ねあそばす。
詳しく奏したまへば、
訳)詳しく奏上なさると、
「阿闍梨などにもなるべき者にこそあなれ。
訳)「阿闍梨などにもなってもよい人であるようだな。
行ひの労は積もりて、朝廷にしろしめされざりけること」と、労たがりのたまはせけり。
訳)仏道修行の功績は大きいのに、朝廷には知られていらっしゃら なかったことよ」と、目を掛けておっしゃった。
【古文】
聖の尊かりけることなど、問はせたまふ。詳しく奏したまへば、「阿闍梨などにもなるべき者にこそあなれ。行ひの労は積もりて、朝廷にしろしめされざりけること」と、労たがりのたまはせけり。
【訳】
北山の聖が霊験あらたかであったことなどを、お尋ねあそばす。詳しく奏上なさると、「阿闍梨などにもなってもよい人であるようだな。仏道修行の功績は大きいのに、朝廷には知られていらっしゃら なかったことよ」と、目を掛けておっしゃった。
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■【聖(ひじり)】…聖人。ここでは、北山の聖(高僧)のこと
■【の】…主格の格助詞
■【尊かり】…ク活用形容詞「尊し」連用形
※【尊(たふと)し】…尊い。霊験あらたかだ
■【ける】…過去の助動詞「けり」連体形
■【など】…例示の副助詞
■【問は】…ハ行四段動詞「問ふ」未然形
■【せ】…尊敬の助動詞「す」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒帝)
■【詳しく】…シク活用形容詞「詳し」の連用形
■【奏し】…サ変動詞「奏す」連用形
※【奏(そう)す】…(帝に)申し上げる。奏上する
「言ふ」の謙譲語(作者⇒帝)
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件(偶然条件)の接続助詞
■【阿闍梨(あじゃり)】…徳の高い僧
■【に】…変化の結果の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【なる】…ラ行四段動詞「成る」終止形
■【べき】…適当(当然)の助動詞「べし」連体形
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【こそ】…強意の係助詞
■【あなれ】…あるようだ
※【あ】…ラ変動詞「あり」連体形撥音便の無表記
※【なれ】…推定の助動詞「なり」已然形
■【行(おこな)ひ】…仏道修行
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【労(らう)】…功労。功績
■【は】…取り立ての係助詞
■【積もる】…積み重なる
■【て】…ここでは逆接の接続助詞
■【朝廷(おほやけ)】…朝廷
■【に】…対象の格助詞
■【しろしめさ】…サ行四段動詞「しろしめす」未然形
※【知ろしめす】…「知る」の尊敬(帝⇒聖)
■【れ】…受身の助動詞「る」の未然形
■【ざり】…打消の助動詞「ず」連用形
■【ける】…詠嘆の助動詞「けり」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【労たがり】…ラ行四段動詞「労たがる」連用形
※【労たがる】…かわいく思う。目を掛ける
■【のたまはせ】…サ行下二段動詞「のたまはす」連用形
※【のたまはす】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒帝)
■【けり】…過去の助動詞「けり」終止形
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緑でくくったのは、敬語の種類と敬意対象です。
源氏物語では、会話文も多く
敬語の学習に最適です。
一語一語しっかり覚えていきましょうね!
「奏す」などの絶対敬語で、
主語や目的語が書かれてなくても
誰が、誰に言ったのかが分かるんですよ!