幽子さんを脅迫した人を突き止めたと、警察から事務所へ、連絡が入ったそうです。
でも、そこまでは良かったのですが…」
ラーク「…捜査の結果、その人は、幽子さんとバミューダーさんのご自宅への『放火』を企てていた…、ということが判ったそうです。
その為に購入した道具類が、それを窺わせる未送信の脅迫文と共に、数点、押収されたと」
おばあさん「おおお…!…か、神様!」
トチーちゃん「ああ、幽子さん!」
幽子さん、今も体調を崩して休んでるんだけど…
此方に来て、身の安全だけは確保出来たけど、毎晩、警察やバミューダーさんのマネージャーさんとの電話のやり取りで、よくよく、心身すり減らしちゃってたみたいなんだ」
そのうち、警察の方もここに来て、色々事情を尋ねられるでしょ?😟」
ナースチャが、夕方、P市からここに帰って来ます。そしたら、ナースチャとも相談の上で、僕の口から、バミューダーさんにこの話をするつもりです」
・・・・・
バミューダー「…ん?
あれっ、ロビンちゃん。今日は、クックちゃんやマレットちゃんと一緒じゃないのかい?」
ロビンちゃん「…ううん。
僕、バミューダーさんと話したかったから、お兄ちゃんたちから、離れてきたの」
バミューダー「どうしたの、改まっちゃって…?」
ロビンちゃん「あのさ、バミューダーさん。
僕ね、バミューダーさんのテルミンのリサイタル、本っっ当に行きたくてね。
ずーっと、ロビンカフェの毎月ほんのちょっとの売り上げだとか、ラークさんやポムちゃんの家の畑仕事を手伝った時に貰ったお小遣いだとかを、貯金してたんだけどね…」
ロビンちゃん、本当に有難うね
僕、今年も世界中を、頑張って演奏して回るから…」
ロビンちゃん「…僕さ、それ、諦めるから…
バミューダーさんには、幽子さんの傍に、ずっといてあげてほしい😟」
というより、ロビンちゃん、何故、君、そんなに顔色真っ青にして…」
ロビンちゃん「僕、聞いちゃったの。
…幽子さん、バミューダーさんの過激なファンの人に、脅されてるよ。
これまでもずーっと、脅されていたみたい。今回は、お腹の赤ちゃんのことまで…」
…『脅し』のせいだよ。幽子さんの体調が悪くなったのは。
幽子さん、ずっと脅されてたんだ。…バミューダーさんと別れないと、お腹の赤ちゃんともども、酷い目に遭わすって。
バミューダーさんが、幽子さんにずっとついてて、守ってあげないと、幽子さん、今に取り返しがつかないことになる」
・・・・・
幽子「バミューダー…」
バミューダー「あの…幽ちゃん。君は…
君が、体調を悪くしたのは、ぼ、僕の…」
バミューダー「全然気付かなくて、ごめん。
本当にごめんなさい」
幽子「…いいや…此方こそ、ずっと黙ってて、本当にごめんね、バミューダー」
何で幽ちゃん、僕にだけ、相談してくれなかったの?そ、そんな大事なこと…。
何より誰より、僕が知っておかなきゃならないことでしょ…」
幽子「…知れば、バミューダーは優しいから、あたしと、このお腹の子の為に、テルミン弾きを辞めるって言い出すんじゃないかって、思ってさ」
幽子「バミューダーの顔を、一度も見ることすら出来ずに亡くなったお母さんのことがあるから、不安で、演奏旅行どころじゃないって、言い出すんじゃないかって」
バミューダー「でも、でもっ、だったら、尚更…
何にも知らずにツアーに出掛けた後で、もし、君に何かあったら、ぼ、僕は…。
…ああ、ごめんなさい、君にそういう風に思わせていたのは、僕のこういう態度だったね」
バミューダー「うん」
幽子「ロビンちゃんは、なんて?」
バミューダー「『僕、バミューダーさんのリサイタル聴きにゆくの、諦めるから』って…」
バミューダーのことが、本当に大好きで、バミューダーに辛い思いをさせるくらいなら、大好きなバミューダーの演奏を二度とステージで聴けなくなっても、自分は我慢するって。
優しくて善良で、とてつもないおバカさんだ。…そういう人ばっかり」
バミューダー「…………」
幽子「そんな思いを、多くの誠実なバミューダーのファンにさせるの、可哀想じゃないか」
でも、僕からも言わせてね、幽ちゃん。
お願いだから、二度と一人で、悩みを抱え込んだりしないでよ。…僕ら、夫婦じゃないか。
僕、幽ちゃんに避けられてる、嫌われてるんじゃないかと思って、本当に悲しかったんだよ
…ああ、良かった、そうじゃなかったんだね。
僕、僕、今、泣いていいよね?」
・・・・・
トチーちゃん「結局、バミューダーさんへは、ロビンちゃんが知らせてくれたのね
それで…その後は?」
ラーク「ええ。…まず、そのファンは警察に問い質されて、自分が幽子さんを脅迫するメールや手紙を各所に送ったと、全て認めました。
仲間がいるかと思って、警察も充分調べたそうですが、完全にその人の単独行動だったそうです。
警察が本人から訊いたところによると、そのファンは以前、人生に躓いて何もかもうまくいかなかった時期に、バミューダーさんのリサイタルを聴いて感動して、楽屋にまで行って、勇気付けて貰ったことがあったそうで…それで、勘違いを。
でも、バミューダーさんの方は、彼女のことを全く覚えていなかったそうです。
…ほんの若い娘さんだったそうです。妊娠が女性の体にとって、どれ程デリケートなものかすら、まだ解ってない位の…」
ポムちゃん🍎🍏「あー…その子、知らなかったんだね。
バミューダーさんが極度の弱視で、一度逢って話したくらいでは、殆ど人の顔の区別がつかないってこと…」
ラーク「今はその人は、深く反省していると、繰り返し繰り返し言っているようです。
幽子さんにも、バミューダーさんの赤ちゃんにも、本当に申し訳ないことをしてしまったと」
おばあさん「トチーちゃんの言った通り、孤独な人だったのね…😟」
ポムちゃん🍎🍏「穏便に済ませることにしたんだね。…でも、それで大丈夫?」
ラーク「僕もチラッと不安を感じましたが、思えば幽子先輩は、元々そういう人です。
その幽子先輩の優しくて大らかな人柄に、学生時代、バミューダーさんを筆頭に、僕らは皆、惹かれたんですよ。それにこれからは、バミューダーさんもついています
バミューダーさんは、そのファンの人の名前は完全に伏せた上で、今回の一連の騒動を、これこれこういうことが起きました、ということで、ファンの方々に向けて、事務所を通して公表しました。
その上で『自分は妻を心の底から愛しているし、我が子の誕生を心から楽しみにしている。妻は、あなた方ファンの皆様の、誰よりも誠意ある味方であって、敵ではない。そういうことをしたファン自身も、自分の大事な人生に傷をつけてしまうような、こういうことは絶対にしないでほしい』というメッセージを、発信したそうです。
バミューダーさんのファンの方々は、同じファンのうちの一人から、そういう人が出てしまったということを聞いて、激しい衝撃を受けたようです」
トチーちゃん「でも…バミューダーさんの演奏旅行は、やっぱり中止なの?😟今年は…。
ああ、可哀想なロビンちゃん。あの子、本当に、勇気を振り絞ったわね…」
ラーク「いいえ、中止にはなさらないそうです」
バミューダー「…ロビンちゃん、僕らを助けてくれて、本当に有難う」
ロビンちゃん「…バミューダーさんのお役に立てて、僕、嬉しいよ」
ロビンちゃん「…うん。解ってる。リサイタルツアー、中止だよね。
…バミューダーさんは、テルミン、これからも、たまには弾くの?」
…それについて、ロビンちゃんに、僕のファンの皆から、お願いがあるって、ことづけを貰ってさ」
バミューダーさんのファンの皆さんから?」
幽子「うん。
今回の件で、ロビンちゃんの勇気に心を動かされた、バミューダーファンの有志の人たちからさ『黄泉・バミューダー・ブロッケン・ヴァルプルギスの今年のテルミンリサイタルを、是非、ロビンちゃんに聴きに行ってほしい。ロビンちゃんの貯金の足らない分は、私たちファンが少しずつ負担する。この国でのコンサート会場の座席を一席分、そのロビンちゃんの為に確保してほしい🎫』っていう、強い申し出があったんだよ」
ロビンちゃん「…えっ?」
…でもね、これは、その『僕のファンのみんな』からの、ロビンちゃんへの、たってのお願いらしいよ。ロビンちゃんに、僕のリサイタルの座席をプレゼントしたいから、是非、受け取ってほしいんだって
その少年は間違いなく、バミューダーの本物のファンで、バミューダーの演奏を、生で聴く価値がある人だから、って」
幽子「ロビンちゃん…?」
バミューダーさん、僕が一度も演奏を聴かないうちに、本当にテルミン奏者辞めちゃうんだなぁ…って、正直、僕、本っ当に悲しかった…」
幽子「…そうだよね。
そんな思いをしてまで、私達を助けてくれて、有難うねロビンちゃん」
ロビンちゃん「うううっ…
…うわあああん。うわあああん」
ロビンちゃん「…はい。…有難うございます」
幽子「な?…バミューダー。
あんたのファン、本当にみんな、良い奴ばっかりなんだってば」
小さい時、Yuni父が海外出張の度に少しずつ買い集めてくれた、ドイツ、Dusyma(デュシマ)社の伝統的な積み木。
皆さ~ん!私、たった今、P市から帰って来たわ!
ラークさん、一昨日の電話で、何か私に相談事がありそうな口調だったけど…一体、何が…😟」
でも、たった今、何もかもが解決したの!✨
ああ、あなたが元気で戻ってきてくれて、とっても嬉しいわ」
…今、どういった状況なの」
ポムちゃん🍎🍏「うん、じゃ、ポムから説明するね…」
ナースチャ「なっ…何ですって~!?
…私、皆から、そこまでギンギンに期待されてたのに、私が到着する直前に、事件が全て解決しちゃったっていうの?!
私、とんだ大間抜けみたいじゃないのっ!」
皆、やっと重い軛のような悩みから解放されて、心底晴れ晴れした気持ちで、君の帰りを待っていたんだから…」
100均おゆまるで取った型に100均樹脂粘土で作ったパーツを入れてレジンを流し、ジャムの瓶を作ってみた。蓋は100均樹脂粘土。
形を均一にするのはホント難しい…
なんかもう、皆が幸せそうなのは良かったけど…幾らなんだって、こんな展開ってないわっ
…うう。悔しいわ
あんまり悔しいから、ラークさん。私、イクラの沢山載ったスモーブローを、今すぐ戴くことにするわっ!」
これまでのお話
登場人物&設定
・・・・・
僕は一羽の伝書鳩を飼っている
彼はとても忠義で信頼のおける鳩
宛先に確実に辿り着き、通り過ぎてしまうなんてこともない
僕は日に何千回とその鳩を放ち
偵察に向かわせる
鳩は沢山の慕わしき場所を過ぎ
僕の愛する人のもとへ飛んで行く
その窓から鳩はそっと中を覗き込み
かの人のまなざしや足音をとらえ
私からの挨拶を、戯れつつ伝え
かの人からの返事を持ち帰る
もう手紙を書く必要などないのだ
涙を鳩に預けてやりさえすれば
ああ、鳩は涙をも確実に届けてくれる
鳩は心底、忠実に僕に仕えてくれているんだ
昼も夜も、目覚めの時も夢の中も
鳩にとっては同じこと
鳩は飛ぶことさえ出来れば、十分に満足している
鳩は倦みも疲れも知らない
飛び立つ空はいつも真新しい
おびき寄せる必要も、褒美も必要とはしない
それほどまでに、かの鳩は僕に誠実なんだ
だから僕も鳩を信じ、胸に抱きしめる
心ときめかすお土産を期待しながら
その鳩の名をご存知か?…「憧れ」だ!
それは誠実この上なき、僕の使者。