此方の、空いているお席へどうぞ~」
ロビンちゃん「いいえ、カフェで合ってますよ
でも僕、今、パティシエになる勉強中で…」
曜日によっては、パンの日もあるんですけど…
でも今日は、月に一度の定例スイーツ研究会の日なので、新作開発の為に、複数のケーキを取り揃えているんです。
ですので、お客様にも、この中から、お好きなケーキを選んで、是非、ご試食してみて頂きたいんですっ」
好きだったら、このケーキスタンドの中のケーキから、どれでも好きなのを、お皿にどうぞ」
あなた「そう…ですね、じゃあ、どれにしようかな。このイチゴショートを…」
ロビンちゃん「有難うございま~すお飲物は何になさいますか?」
あなた「ええと、このメニューにある『季節限定のお飲み物』っていうのは…」
マレットちゃん「今の季節だと、季節のお飲み物は、ホットレモネードか、生姜湯のどちらかになっています
甘酒は、ちょうど昨日で終わっちゃって、ごめんなさい。
基本のお飲み物は、ココアのお砂糖ありかお砂糖なし、ハーブティーかホットミルクですっ」
あなた「…ええ?」
クックちゃん「僕らは子供だから、強いカフェインが入った飲み物は、まだお店で出しては駄目だって、ラークさんやおばあちゃんたちが…」
マレットちゃん「お店でご提供するには、自分たちが何杯も飲んで、ちゃんと味や香りを確認してからでないと、自信を持ってお出しすることが、出来ませんので…」
ロビンちゃん「将来的には僕、カフェの店長として、バリスタの資格を取るつもりなんですけど、子供のうちはまだ、その為のお勉強が出来ないから、目下は、体に優しくて味も美味しいスイーツやお飲み物を研究して、お出ししています
材料は主に、ラークさんやこの近隣の農園のお野菜や果実や小麦、卵やバターやチーズを使ってるんですが、どれも凄く質が良いんです🍋🥝🍐🌾🧀🧈」
あなた「はあ、なるほど…
そういうことだったんですね。それじゃ、ホットレモネードで…」
ロビンちゃん「有難うございま~す
早速、お注ぎしますね🍋」
あなた「あの…それにしても、随分ここ、風変わりなカフェですね…
…こういう、マスターを囲んで、お客さん同士で座談会でも出来そうなテーブルのカフェって、入ったことなかったので…💧」
ロビンちゃん「僕たちは、初めて来たお客様が、お喋りが苦手そうなら、黙っています」
マレットちゃん「あちらのブックスタンドの中に、沢山、絵本が置いてありますし、私たちも、必要があれば、静かに本を読んだり、音楽を聴いたりしていることも出来ますので、もし、お話するのが苦手な場合には、遠慮なく、そう仰って下さいねっ」
あなた「…あ、本当だ、可愛い絵本がいっぱい…」
あ、でも、お読みになるなら、僕のイチ推しは、世界的なテルミン奏者、バミューダー氏の、リサイタルパンフレットです
僕の宝物なんですけど。…ねっ、とっても素敵な人でしょ?」
だから、そのパンフレット、一番の宝物なんだけど、しまっておかずに、お店に来るお客さんたちに、見てもらうことにしたんだって。
多くの人に、バミューダーさんを知ってもらいたいんだって言ってね」
マレットちゃん「バミューダーさん、凄くカッコ良くて、とても優しい方なんですっ」
あなた「あ、確かにイケメン…」
…僕ね~、旅が大好きなの~旅行のお話だったら、幾らだって出来るよ!」
ロビンちゃん「ただ…
このカフェを見かけて、ここへいらっしゃるお客様というのは、一人ぼっちでいるのが寂しくなって、ちょっとの間でも、誰か、お話する相手がほしい…人の声が聞きたいな…って、思ってらっしゃる方が、大半なんです」
あなた「…えっ?」
マレットちゃん「この場所は、あなた方の世界から見て『季節の扉』の向こう側にあるんです。
『季節の扉』っていうのは、本当に、ごくごく稀にしか、開かないんですよ。
そして、それが開く時というのは、寂しい、誰かと話をしたいと感じている方が、その近くにいる時なんだそうです」
あなた「えっ?…は、はい。
でも、その後もう一度、この果樹園の中のカフェを探してみようとしたら、果樹園もカフェももう、何処にも見当たらなくて…
それなのに今日、また偶然、見かけたので、思いきって、ここに入ってみたんですけど…」
このカフェは、簡単に見つかる時と、どんなに探し回っても、絶対に見つからない時とが、あるんです」
ロビンちゃん「季節の扉が、開いている時です
…つまりは、誰かとお話をしたいと、あなたが、心から願っている時」
あなた「そういう事だったんだ…
…本当ですね、そう言えば私、お店に入ってきてから、今までずっと、あなた方とお話してたんですね。
初対面の人と話すの、凄く苦手なはずの私が…」
クックちゃん「ねね、そのショートケーキも美味しいけど、こっちのチョコレートパイも、すっごく美味しいから、ちょっと食べてみてよ」
あなた「…あ。確かにこのパイ、皮がパリパリで、チョコレートが染みた部分がしっとりしてて、美味しいかも…
あと、このレモネードも…」
マレットちゃん「そのレモネード、ラークさんの果樹園の、無農薬レモンを使ってるんです
とても香り高いのに、小鳥が食べに来るくらい、ほんのり甘くて、苦味が抑えられた、爽やかな酸っぱさのレモンなんですよ🍋」
皮にまで甘さが…。酸っぱくないレモン、初めてかも…
…そうだ、新しいスイーツを考案してるっていうなら、これを使って、レモンタルトやレモンパイを作ってみたらどうですか?🍋」
ロビンちゃん、良いかもしれませんよ、それ!」
ロビンちゃん「た、確かに!やってみよう
…わあ、有難うございます!」
クックちゃん「…レモンパイ?」
ロビンちゃん「うん。クリームと、煮立てたレモン果汁を混ぜて、クレームシトロンを作って…、
サクサクパリパリに焼いた、パイ生地に乗せて…🍋
…うん、いい!すっごく美味しそう!」
あなた「レモンチーズケーキにしてみるとか、ゼリーやマーマレードにしてみるとかしても、美味しいかもしれないよ🤔💡」
マレットちゃん「…わあ!
そうしたら、甘いのばかりじゃなく、酸味のある、爽やかなスイーツも増えますよ」
ロビンちゃん「お、お兄ちゃん、メモ取ってくれる?
僕、早速、レモンケーキ、作ってみる!」
クックちゃん「OK!📋️✍️今、書き留めてるよ。
…すごいや、色々なアイディア、有難う」
・・・
「季節の扉」の向こう側にある、ラークさんの果樹園と、
その奥にある、小さなロビンちゃんカフェ。
気候の不安定な寒い晩、一人ぼっちが耐えられなくなった時には、どうか思い出して下さい。
きっと「季節の扉」が開き、ロビンちゃんカフェに、行き着くことが出来るでしょう。
・・・・・
これまでのお話
登場人物&設定
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「へ調のメロディ」ルビンシュタイン