「あの時のひと言、変だったかな」
「もっと気の利いた返しができたはずなのに」——。
過去の些細な出来事が頭を巡り、
不安の波に飲み込まれる。
社交不安障害を抱え、
いわゆる豆腐メンタルである私にとって、
それは毎晩のように繰り返される
苦しい時間でした。

私が「このままではいけない」と強く痛感した、
ある出来事があります。
それは職場のエレベーターで、
偶然一緒になった先輩から
「その服、すごくいい色だね」
と褒められた日のことでした。
私は極度に緊張してしまい、
「いえ、安物なんで!全然そんなことないです!」と、
食い気味に強い口調で否定してしまったのです。
その日の深夜、
ベッドの中で反省会が始まりました。

「なぜ素直に『ありがとうございます』と言えなかったのか」
「せっかく褒めてくれたのに、不快にさせたに違いない」
「明日、どんな顔で会えばいいのか」
考えは無限にループし、
心臓の鼓動が早くなり冷や汗が止まりません。
結局その日は一睡もできず、
翌日の仕事では頭が働かずに
小さなミスを連発。
このままでは、夜の不安のせいで、
現実の人生まで停滞してしまうと、
強い焦りと恐怖を感じた瞬間でした。
そこで私は、
自分の「意志の力」で
反省会を止めることを諦めました。

「考えないようにしよう」
と思えば思うほど、
余計に考えてしまうからです。
代わりに試してみたのが、
物理的な「仕組み」に頼ることでした。
それが、寝る前に
ノートパソコンで環境音楽を
「ぴったり1時間だけ」流すというルーティンです。
1時間経てば自動的に電源が
落ちるように設定しておき、
「この音が鳴っている間は、すべての思考をお休みしていい」
と自分に特別な許可を出しました。

頭の中で再び先輩の顔が浮かび、
自分を責める声が聞こえそうになっても、
意識を「音楽のメロディ」に強制的に引き戻します。
これは、暴走する思考のスイッチを、
音の力を借りて物理的にオフにする作業でした。

これを始めてから、
不思議な変化が起きました。
意識を音に向けることで張り詰めていた糸が緩み、
気がつくと音楽が止まる前に、
安心して深い眠りに落ちている日が格段に増えたのです。
自分の弱い心をいきなり変えようとするのではなく、
物理的な「仕組み」で心を守る。
この気づきは、
私にとって暗闇に差した一筋の光でした。
ほんの少しの工夫で、
停滞していた状況は確実に変えていけると実感しています。

これからも自分の不器用さを優しく労わりながら、
焦らず前を向いて歩んでいきたいです。


