菅田さんが圧倒的な存在感を放つ異色の一作
「溺れるナイフ」はジョージ朝倉さんによる同名の少女漫画の実写映画化作品。監督は「あの娘が海辺で踊ってる」で第24回東京学生映画祭実写部門審査員特別賞を受賞した新鋭の山戸結希監督。主演は「渇き。」「Silence」などの小松菜奈さん、「セトウツミ」「銀魂」などの菅田将暉さん。
ストーリー:東京でモデルをやっていた夏芽は父親の仕事の都合で中学生の時に浮雲町に引っ越してきた。そこで出会ったのがコウという金髪の少年だった。夏芽はモデル時代の仕事をコウにバカにされ、彼を見返すために著名な写真家である広能による写真集撮影の仕事を受けることにする。しかし、その件をきっかけにコウと付き合うことになった。幸せな毎日を過ごしていた夏芽だったが、祭りの夜、夏芽の熱狂的なファンである蓮目によって、夏芽は人気のない場所へ連れ出されてしまう。
面白かったです。
ただ、すごく好き嫌いが分かれる映画じゃないかという印象を受けました。また、原作が好きな人が面白いと思うのかどうかもちょっとわかりません。例によって原作を読んでいないので、初見の感想だと思ってください。
今作はもうとにかく菅田さんの演技がすごかったという感想が真っ先に浮かびました。そのくらい存在感がありましたし、ぐいぐい引っ張っていたと思います。他の登場人物もそれぞれ良い演技をしていましたが、菅田さんのカリスマ性はとにかく抜きん出ていたと思います。特に今作のコウはそういうカリスマ性を備えたキャラクターなので、彼の演技が物語に説得力を与えていました。
また、コウと夏芽と同級生である大友役の重岡大毅さんもなかなか良かったと思いました。すごく自然な演技で、これは撮り方も良かったのかもしれませんが、コウとは全く違った魅力をもった役を好演していたと思います。
一方、ちょっと脚本的に出番が少なくてもったいなかったのが上白石萌音さんが演じるカナですね。上白石さんは良い演技をしていたと思うし、とても印象的だったんですが、出番があまりなかったので、見せ場が少なくなってしまっていた気がしました。Wikipediaを読む限り、もっと重要性がある役のようなので、その性質が結構なくなっていたのは残念ですね。ただ、尺的にも全部を描くことはできないので、仕方ないとは思います。
素人目に見ての感想なんですが、映像的にすごく綺麗だと思うシーンもあれば、あんまり効果的じゃないなぁ、と思うところもあり、何だか安定しない印象を受けました。あと、セリフの音をアフレコしたであろうシーンにおいて、少し違和感があるところもあったので、その辺はちょっと作りが甘いのかな、と思いました。超偉そうですけど。ただ、そういうシーンでも、菅田さんは違和感なく演じていて、すごいなぁ、と思いました。
あとは今作の中の、現実だか夢だかわかんないみたいなシーンをどうとるかによって好き嫌いも分かれそうですね。あれを「わけわからん」と思ったら多分辛いし、逆に「これはすごい!」となる人もいるかもしれないし。
個人的にすごいと思ったのは重岡さん演じる大友がある曲を歌うシーンですね。一曲まるまる歌うという演出にも覚悟を感じましたし、選曲も演技もすばらしかったと思います。あのシーンと祭りのシーンの菅田さんを観るだけでも今作を観る価値はあると思います。
好き嫌いは分かれそうですが、心を揺さぶる作品にもなっていると思うので、興味があるなら行ってみるといいと思います。
あと、作中に流れる歌が好きでした。ミスiD2015を受賞した堀越千史さんが歌っているんですが、その声が作品に合っていて、非常に良かったです。
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