猛禽類の餌として入手しやすいのはマウス、ヒヨコ、ウズラの3種類が代表的。 それぞれについて簡単にまとめてみた。
マウスは爬虫類飼育者の間で完全栄養食と言われて久しいが、猛禽類の多くがネズミを主食としていることから猛禽類の餌としても理想的といえるだろう。 もちろんピンクマウス(生まれたばかり)とアダルト(成獣)など成長段階で栄養的に違いが有り、ピンクマウスは脂肪が多いがカルシウムが少ない。 運動量の多くなるホッパーあたりからカルシウムが増えタンパク質も充実してくる。 そしてリタイヤマウスは老齢期らしく脂肪が多くなる傾向がある。 そもそもマウスとは実験動物用に品種改良されたハツカネズミで、実験目的に合わせて多くの種類がいる。 その中でも多産で比較的大型になる種が餌用に養殖されている。 一部ではクリーンルームなど実験動物用途と同様の施設で産出され、通常生活する私たち人間よりも清潔なネズミも有る。
一般的にヒヨコ(ニワトリの雛)は孵化後すぐに雌雄判別され、養鶏場へ行くメスと違ってオスは何らかの方法(いったんは内容を書いたが割愛することにした。いくつかある処理方法のうちの一つ 興味のある人だけ→
http://goo.gl/me7NH )で処理されている。 その処理されるオスの一部が爬虫類や猛禽類の餌用として販売されている。 ヒヨコもマウス同様に栄養に優れた餌であるが、脂肪分(コレステロール)が多すぎる為に腹部に抱えている卵時代の黄身を除いて与えた方が良いとされている。 そのため黄身に含まれる豊富なカルシウムや質の良いタンパク質が失われ、その結果マウスよりも栄養的に劣る事になる。 特にヒヨコは生まれたばかりで、骨へのカルシウム沈着量が少ない。 よってヒヨコを餌にする時はサプリなどでカルシウムの補給が望ましい。 カルシウム不足では体が大きくなりきれなかったり、骨折の危険性が高まるばかりか、神経障害など目に見え難い病気になる恐れもある。
ウズラは雛とアダルトの2種類が販売されている。 雛はおそらくオスばかりで、ヒヨコと同様に腹に黄身を抱えている。 小型の猛禽類に与えやすいサイズながら、黄身を取り除くと可食部分が少なすぎるように思える。 そこで頭を切り替えて、黄身を取り除かずに中型種以上の補助食とすれば活用できるかもしれない。
親ウズラ(以下ウズラ)は、産卵のために一定期間飼育され、その後食肉(人間)用や廃棄処分にまわされるものの一部が餌用として販売されている。 肉は頭部や胸部など各部位によって栄養価が異なるので、頭から尻尾の先まで全体を食べることによって栄養バランスが取れると言われている。 よってウズラは大きめなので、中型種以上の猛禽に適しているといえる。 ウズラはヒヨコと違って骨もしっかりとしているので、栄養的にも安心できそうに思えるが、留意しておきたい事がある。 それは本来のウズラはヒヨドリと同じような漂鳥(比較的短距離の渡り)であるのに、それを採卵目的に狭い飼育施設の中で飼育しているということ。 負荷のかからない骨には十分なカルシウムの沈着は望めない事から、飛翔することを禁じられたウズラの骨は、健康的な骨とは言えない。 やはりヒヨコと同じようにカルシウムを補給したほうが良いだろう。
これらマウス、ヒヨコ、ウズラのいずれも生きたままでも手に入れる事は可能だが、殆どの場合は冷凍されて販売されている。 そこで愛鳥の為にも気をつけたいのが餌の鮮度。 絞めてから冷凍までの処理の早さを謳い文句にしているショップもあるようだが、早さは当然として冷凍する温度が重要。 マイナス30℃以下での急速冷凍が理想。 そして出荷まで在庫する間の保存温度はマイナス18℃以下は必須。 理想どおりか、或いは近い状態の物か判断するには、クール便が到着して開梱した時に、およそ判断できる。 シャーベットのような霜が付着しているのは言語道断。 ネズミやヒヨコやウズラの個々が凍りついて、くっついているのは怪しい。 見た目も触れた感じにもサラッと乾燥していて、個々の付着がみられず直ぐにバラける状態であれば、それまで低温が保たれていた証拠でGOOD。 もちろん運送中に解凍気味になってしまう事も考えられるが、同じショップから良くない状態で複数回届けられたとしたら、それでも原因は運送会社と言えるだろうか。
あと鮮度といえば注意したいのが処理済みウズラ。 処理済みウズラとは内臓を取り除いたもの、或いは内臓、頭部、翼、足を取り除いた物で、自分で処理をする手間を省け、つまり処理中に流すことが多い水の節約にもなる便利商品。 当然、廃棄物も少なくなるし、物自体がコンパクトになるので冷凍庫内での収納効率が良い。 良いことだらけの処理済みウズラだが、唯一にして最大の欠点が鮮度に関することで、それは腹を開いたり頭部その他をカットしている為に、肝心の肉や脂肪が酸化しやすいのだ。 一般的に冷凍された精肉の鮮度が保てるのは、マイナス18℃以下に保てる冷凍庫を用意したとしても1ヶ月程度といわれているので、同様に肉が空気に触れている処理済みウズラも同程度の期間で鮮度切れになると思われる。 味が落ちて愛鳥のテンションが下がる程度ならまだ良いが、特に脂肪の酸化は問題で肝臓をはじめとする内臓への負担が、ボディブローのようにジワジワと愛鳥の健康を蝕んでいく。 ショップが出荷するまでの状態が万全である事を前提として、冷凍庫の開閉頻度にもよるが未処理のウズラで2~3ヶ月、処理済みウズラで1ヶ月を目処としておいたほうが良さそう。
しかし様々な状況や都合によっては多くをストックしておきたい事もある。 そんな時に重宝するのが
昨年の 8月15日の記事で紹介した
YAMAZEN フードパック のような脱気密封機&脱酸素剤。 袋が破れないように足や嘴をカットした後、脱気密封して無酸素状態にしてしまえば1年くらいは冷凍保存が可能だそうだ。
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