Jules César en Egypte @TCE | Mevrouwのブログ。。。ときどき晴れ

フィリップ・ジャルスキーの指揮によるオペラ。

彼が歌わないのに行く価値あるだろうか、

とか、

さんざん迷ったけど。

やっぱり行くことにした。

2022年5月22日

Jules César en Egypte
Georg Friedrich Haendel

Philippe Jaroussky | direction
Damiano Michieletto | staging
Thomas Wilhelm | choreography
Paolo Fantin | scenography
Agostino Cavalca | costumes
Cécile Kretschmar | hairdressing make-up, masks
Alessandro Carletti | lights

 

Gaëlle Arquez | Giulio Cesare
Sabine Devieilhe | Cleopatra
Franco Fagioli | Sesto
Lucile Richardot | Cornelia
Carlo Vistoli | Tolomeo
Francesco Salvadori | Achilla
Paul-Antoine Bénos-Djian | Nireno
Adrien Fournaison | Curio

Ensemble Artaserse

 

予告編

 

ジャル様の指揮デビューは必聴というわけではないかもだけど(ごめんなさいジャル様)、

サビーヌさんのクレオパトラは必聴だ。

新しいクレオパトラの誕生だ。

まったくもって、したたかなクレオパトラとはかけ離れ、

歌がすなおでこんなにも清らかでよいのかしら、というくらい純粋なイメージ。

まっすぐで、なんの苦労もなく高音がでている。

ボリュームはたしかにマックスではない。

しかし、十分に届く。

なんといっても発声が美しい。

そして、エレガントなのだ。

ピオウもとってもエレガントなクレオパトラだったけれど、サビーヌさんのはさらに乙女だった。

 

 

今回クレオパトラは様々な衣装をとっかえひっかえまとう。

それがすべて似合っていて、スタイルいいっていいなあとしきりと思った。

 

ファジョーリのセストは一人だけ別世界にいるんじゃないかというくらい浮いて聞こえてしまい、

少し残念。

歌はうまいですよそりゃ。

でも彼の歌い方はあまりにも個性的で、

現代劇のなかでひとりだけ歌舞伎の口上をやっているように見えてしまうのだった。

ヴィンチとかポルポラとか、こってこてのを歌うのなら大変によいけれど。

 

トロメオ役のヴィストーリは体調悪くて医者行ってコルチゾール射ってもらったとのこと。

上演前に劇場の係がでてきて「ヴィストーリ不調ですが歌わせていただきます」とことわりを言っていた。

しかし、はじまってみたら、力振り絞って歌っていたんだろう、非常に集中力あって好演。

殺されるシーンが気の毒な演出。

プラスティックシートを被せられてセストに窒息させられるというヤクザ映画のような死に方。

だから、ほんとに気を失っているんじゃないかと心配したほどだ。ごろんと転がってるままで。

彼のパートは、多少アリアを短くしてあったんだろうとは思う。

終演時間が若干早かった気がするから。

もちろん私にとって一番のトロメオはクリストフ・デュモーなのだが、

今回のヴィストーリはそれに次いだと感じた。

亡きブライアン・アサワも捨てがたかったが。

 

肝心のチェーザレ役のアルケス、ちょっと物足りなかった。

良い歌手だとは思う。

5年前、リエージュで見た「オリー伯爵」のイゾリエ役は若さ溢れて、

スラリとしてズボン役ぴったりと思った。

ヘンデルよりロッシーニむきかも。

 

演出は運命に翻弄される、というイメージなのか。

赤いロープが縦横無尽に張られていたり、

砂時計やらてんびんを持っている「裸の貞子トリオ」(としか表現しようがない)が始終でている。

すごい思わせぶり。

彼女たちはまるで狂言師のように中腰でゆっくりと歩く。

また、死んだポンペイウスが亡霊となっていつも舞台でウロウロしている。

(このひとは最後全部脱ぎ捨ててしまう)

要するに演出はあまりかちっとハマった気がしなかった。

でもものすごく悪趣味、というほどではない。

 

アンサンブルアルタセルセにはさほど期待していなかったけど、いい演奏だった。

想像していたよりずっとキレがよかった。

それに、ホルンはきっと特訓したんでありましょう、

千秋楽だったこともあり、一度もはずさなかった。

 

ギリギリまでパリに行くかどうか迷っていたので、タリスのチケットが高額になってしまい、

行き帰りともフリクスバスで決行。

とても疲れた。

 

でも、やっぱり行ってよかった。

このプロダクションは別の劇場でもやるみたいだけど、

サビーヌさんはよそへは行かないようなので、

ここで聴いておいて本当によかった。