Mevrouwのブログ。。。ときどき晴れ

縁あってオランダに住んでます。
コメント欄を一度外してしまったため、以前いただいたコメントが消えてしまいました。
こんなことになるとはつゆ知らず、、、
恩知らずで本当にごめんなさい~。






2024年7月13日

Das Münchner Nationaltheater

 

DIE PASSAGIERIN

Composer Mieczysław Weinberg. Libretto by Alexander W. Medvedev based on the eponymous autobiographical novel Pasażerka by Zofia Posmysz (1923-2022).

 

Opera in two acts (composed in 1968, concert world premiere in 2006)

 

 

 

劇場内も美しい

 

 

 

客席もまた豪華

 

 

Conductor

Vladimir Jurowski

Production

Tobias Kratzer

Set Design

Rainer Sellmaier

Lighting

Michael Bauer

Video

Manuel BraunJonas Dahl

Choruses

Christoph Heil

Dramaturgy

Christopher Warmuth

 

Lisa

Sophie Koch

alte Lisa

Sibylle Maria Dordel

Walter

Charles Workman

Marta

Elena Tsallagova

Tadeusz

Jacques Imbrailo

Krystina

Daria Proszek

Vlasta

Lotte Betts-Dean

Hannah

Noa Beinart

Bronka

Larissa Diadkova

Yvette

Evgeniya Sotnikova

 

Bayerisches Staatsorchester

Chorus of the Bayerische Staatsoper

 

パサジェルカは映画化もされている1962年の小説をベースにしているオペラ

1968制作で初演が2006年

 

クラッツラーの演出ではクルーズ船のバルコニーが最初のシーン 様々な人たちがそれぞれの個室のバルコニーに出てくる

 

そして時折カーテンが開いてリーザの個室の中が出てくる

最初から年老いて夫の骨壺を抱えている現在のリーザが黙役で事の一部始終を見ている。

 

リーザは外交官夫人としてブラジル行きの客船に乗っている。

アウシュビッツで看守をしていたことは夫ウォルターにも秘密にしていたが、

「殺したはずのマルタ」そっくりの女客が船内にいるのをみかけ、

狼狽し、夫に秘密を打ち明ける。

ウォルターは嘆き、怒り、妻がSSに所属していたことがばれたら

外交官としての自分の立場が危ういと焦る。

リーザは収容されている女のマルタが同じく収容されている男タデウシュの婚約者だとわかり、2人をカポのように都合のいい囚人たちにしたてようとしていた。

合わせてやるから協力しなさい、と。

だがバイオリニストのタデウシュは弾けと言われたワルツのかわりにバッハのパルティータ2番のシャコンヌを弾く。バイオリンは打ち壊されタデウシュは殺される。

マルタはリーザの言いなりにはならず、書面を外部に漏らしていた。

マルタも死の壁へ行かされることになった。

 

その死んだはずのマルタが生きていたのか、

それとも他人の空似なのか、明かされないまま物語は終わる。

だが、リーザにとっては取り返しのつかない恐ろしい罪深い過去を抱えて生きていかなくてはならない。

年老いたリーザは船から飛び降りて死を選ぶ。

 

 

マルタは他の囚人のようにしましまの服を着てはいない。

他の同じ立場の収容されている女たちも全員黒いワンピースを着て、ヘアスタイルもストレートのロングで同じ。

 

タデウシュのバイオリンはオケの人が出てきて後ろで弾く

 

ツァラゴワは今度もまた諸肌脱ぐ役だがスタイル抜群なので美しい。

何より彼女の歌唱は素晴らしく、すっかり主役のコッシュを食っている

ラストの嘆きのアリアは、姿を見せないのでかえって印象深い。

どういう役で歌っても彼女には感心する。

今回カーテンコールではプロンプターさんと握手していた。

2024年7月14日

Prinzregententheaterは格調高い

 

PELLÉAS ET MÉLISANDE

Composer Claude Debussy. Text by the composer after the play by Maurice Maeterlinck (1893).

Musikalische Leitung - Hannu Lintu

Inszenierung - Jetske Mijnssen

Bühne und Kostüme - Ben Baur

Licht - Bernd Purkrabek

Choreographie - Dustin Klein

Chor - Franz Obermair

Dramaturgie - Ariane Bliss

Arkel - Franz-Josef Selig

Geneviève - Sophie Koch

Pelléas - Ben Bliss

Golaud - Christian Gerhaher

Mélisande - Sabine Devieilhe

Yniold - Felix Hofbauer (Solist des Tölzer Knabenchors)

Ein Arzt - Martin Snell

Ein Hirt - Paweł Horodyski

 

Bayerisches Staatsorchester

Projektchor der Bayerischen Staatsoper

Opernballett der Bayerischen Staatsoper

Statisterie der Bayerischen Staatsoper

 

今日の終演が22:30と表記が変わっており、最後まで観たらナイトジェットに間に合わない。

途中退出だなあと思いつつ見始めた。

演奏が始まる前は舞台でずっと雨が降り続いている映像。

このあと一旦幕が閉じて会場が暗くなり、ピットにマエストロが入ってきた。

 

演奏は素晴らしかった!

まずオーケストラの音が美しい。透明感が半端ない。

かつてこんなに澄み切った音のペレアスとメリザンドを聞いたことがない。

 

そして歌手がまたみなさん粒よりで歌も演技も極上。

 

ゴローのゲルハーヘルは老人扱いされることでますます怒りっぽく残酷な性格になっていくが、これまで観たどの演出より最初から暴力的。

イニョルドを虐待しているのだ。

ネグレクトかと思えば恫喝したり。

歌唱も演技もこの人以外考えられないほど。

声が品格あるため、行動がより残酷にうつる。

 

サビーヌのメリザンドは、ああこれぞメリザンド!な姿と声。

これくらいの規模の劇場だと彼女には心地よかろう。

透明で柔らかくも凛とした歌声があざやかに響きわたる。

そしてこのプロダクションでは最初からペレアスを恋い慕う設定で、

その振る舞いも痛々しく愛おしい。

結婚指輪は誤って落としてしまうのではなく堀に投げ捨ててしまうという演出で、

メリザンドの覚悟がわかる。

 

ペレアス役のBen Blissは初めて聴いたがとても張りのある声で、非常に好感度高い。

この演出では自信家でちょっととぼけたりする役柄になっているため、

背も高く身体ががっしりしている容姿もピッタリだ。

テノールだが高い音よりも低いレンジを堂々と歌うタイプ。

 

演出はオランダ人のマインセン。

アムステルダムでチューダー朝三部作を演出したのをみたが、

地味ながら格調高く、すっきり美しいものだった。

今回のペレアスとメリザンドは心理劇で、歌詞は殆どが心象風景とみなされている。

冒頭森で狩りをしていて迷ったというところは

現代社会の空々しさの中で居場所を見つけられない状況の喩えとして捉えられている。

孤独を嘆いているゴローが同じく社交界に失望しているメリザンドと出会うという設定だ。

そして井戸は出てこない。

ここではペレアスはメリザンドをモデルにして部屋のなかで絵を描いている。

部屋の隅に何故か小川のような堀があり、水がたたえられている。

そこに指輪を投げ捨ててしまうメリザンド。

洞窟ももちろんない。

二人でテーブルの下に潜ってキスを交わそうとする。

 

つまり最初からゴローの見ていないところで逢瀬を図る。

城の窓から髪を垂らすメインシーンでは

ゴローといっしょに寝ているベッドにメリザンド一人だけ起き上がる。

そしてこっそり忍び込んできたペレアスと大胆にも抱き合う。

今日はあなたは僕の囚われ人だよと言って抱き寄せるというのは切なくてエロチック。

 

ゴローがペレアスを地下に連れて行って脅すシーンは死の床にある(実際には回復するが)、ペレアスの父親の顔を見せて、ほらこれが死だ怖いだろうと脅すように読み替えられている。

これもよく出来ている。

 

そうそうそれからイニョルドは少年合唱団のソリストが演じていてこれまた歌も演技も素晴らしい。ここではイニョルドは父に虐待されていて常に怯えて一人遊びをするしかない哀れな少年。羊のおもちゃを並べて室内で遊び、召使いを羊飼いに見立てた演出になっている。

ひとりぼっちのイニョルド

 

衣装もセットもシンプルでシックで格調高い。

この貴族の暗い家庭の物語はずっと光の額縁の中でも演じられる。

それは動く不幸な肖像画のようでもあった。

 

第5場で、床が水浸しになっているのが一体何を表しているのか。

最初から水は何かを浄化するというイメージで登場する。幕が上がる前は舞台にはずっと雨が降っている映像が流れている。だから水がこの演出では重要なキー。

ペレアスも殺されると水の中に倒れる。最後のシーンでどのように水が表されて使われるのか非常に興味があった。

 

だけどやはり22:20に途中退出

メリザンドが死に行くところだがまだ赤ん坊は登場してなかった。そのあと演出がどうなっていたのかを確かめたかったがいた仕方ない。

後ろ髪を引かれる思いで劇場を後にし駅へ急いで夜行列車に間に合った。でも予定時刻をかなり過ぎたのに出発しない。こんなことなら最後まで観ても大丈夫だったのかも残り数分はラジオのオンデマンドを聴くしかない。

 

批評を読むとラストはなんとメリザンドの赤ん坊が連れてこられるシーンでは死んだはずのペレアスが赤ん坊を抱いて現れるという演出だったらしい。

たしかに、ここではゴローはペレアスを銃で殴っただけだったから生きていても変ではない。

それにこれは赤ん坊はペレアスの子だったという暗示と言えるし。

 

とにかく美しく、かつ聴き応えあるプロダクションなので、どこかで映像化されていることをせつに望む。

 

 

 

ブリュッセルのモネ劇場でカステルッチの新演出でリングが上演。

昨年秋に衝撃的なラインの黄金を見てうち震えたので今回上演のワルキューレにも期待してみた。





Conductor

ALAIN ALTINOGLU


Director, Set, Costume & Lighting Designer

ROMEO CASTELLUCCI


Dramaturge

CHRISTIAN LONGCHAMP


Artistic Collaborator

MAXI MENJA LEHMANN


Set Design Collaborator

PAOLA VILLANI


Costume Design Collaborator

CLARA ROSINA STRAßER


Lighting Collaborator

RAPHAEL NOEL


Choreography

CINDY VAN ACKER


Siegmund

PETER WEDD

Hunding

ANTE JERKUNICA

Wotan

GÁBOR BRETZ

Sieglinde

NADJA STEFANOFF

Brünnhilde

INGELA BRIMBERG

Fricka

MARIE-NICOLE LEMIEUX

Gerhilde

KAREN VERMEIREN

Ortlinde

TINEKE VAN INGELGEM

Waltraute

POLLY LEECH

Schwertleite

LOTTE VERSTAEN °

Helmwige

KATIE LOWE

Siegrune

MARIE-ANDRÉE BOUCHARD-LESIEUR

Grimgerde

IRIS VAN WIJNEN

Rossweisse

CHRISTEL LOETZSCH

° (MM Laureate)

La Monnaie Symphony Orchestra

Production

LA MONNAIE

Coproduction

GRAN TEATRO DEL LICEU (Barcelona)


今回はInleiding(解説)聞いた。

ワグナーは女に理屈というか人間社会の道徳をやかましく言わせているという。フリッカはその筆頭。

Lohengrinのエルザなんかもあんた名前ないわけないでしょと迫る。

タンホイザーでは、エリザベートが説教がましいからタンホイザーがセックスに溺れる。

対する男、ここではヴォータン、は自由と野生的な本能を前面に出している。湧き上がる愛情で近親相姦も許される。

そしてカステルッチの演出は自然対文化という構図になっているとのこと。

兄妹の交わりは同じ血の交わりという理解で実際に血が出るとか。

実際にそのシーンでは、ジークムントとジークリンンデは血みどろになって愛し合う。(三人吉三のおそめと十三郎は犬の衣装着せられて斬られて死ぬんだけど、なんとなくそれを思い出した)

また人間社会と野生という対比なのでフリッカの手下のフンディンクは正体が犬として表される。

たしかにフンディンクが舞台にいる間犬がうろつく。

このブラックシェパードがよく躾けられていて企みありそうにウロウロしているのが効果抜群。

フンディンクが死んだ後は犬(もちろん作りモノ)が吊るされて表現されてる。

さらにフンディンクの住まいはアパートで、異常なほど家具がひしめき合っており、それが動いて回って、人間は通るのに苦労する。フンディンクは戸棚のようなものに入っていって寝床へいく。これは窮屈な人間社会を表しているらしい。



さらにノートゥングはジークリンンデの身体に刺さっており、これをジークムントが抜く。そのノートゥングを冷蔵庫にしまっておくというのが、なんじゃこれ?だったけど。



フリッカとヴォータンの諍いでは、フリッカは本当に神々しい姿でお付きのものを引き連れて出てくる。白い鳩がたくさん登場するが、それはおそらく見せかけの平和。

仮面夫婦というか。それでフリッカは鳩を握りつぶす。一瞬本物かと思ったけど、握りつぶした鳩は作りもので羽だけパタパタ動く仕掛けだった。夫婦喧嘩のシーンが終わると鳩はすっかり集められるけど鳩使いの人すごいなと。ハラハラするもんね、ホンモノの動物出てると。さすが!と感心しきり。

この鳩のシーンが一番カステルッチのひねりが効いてるところだと思う。というかその意図を汲み取りやすい。


ワルキューレの騎行では馬は7、8頭出てきて、数頭は全裸の男性の死体(死んだ兵士) を載せられてる。それをおろして死体の山にするのが、不気味すぎる。死体役ダンサーさんたちも大変。また、死体はピエタのようにもポーズ取らされたりする。シュミがちょっと。。。




フリッカに言い負かされたヴォータンはIdiotと黒旗を振られる。これもちょっとシュミ悪い。


ラストは舞台に被さってくる白く光る壁の下に横たわったブリュンヒルデが挟まってしまうんじゃ?と心配になるけどちゃんと仕掛けがあるようで無事。炎は上がらず赤くなるのはヴォータンの槍だけ。


しかしこの次にジークフリートはどうやってブリュンヒルデを助け出すの?


演奏がすっかり終わった後にヴォータンの頭上に火の輪が現れてすぐ消える。イリュージョンみたい。

そういえば冒頭の前奏の間も逃げ惑うジークムントが知らず知らずに手を伸ばして縋りつこうとするのも輪だった。



ジークリンンデとジークムントの歌は心配したよりはよかった。

ブリュンヒルデがノーマークだったけど素晴らしい👍

ヴォータンも愚か者扱いだけど品格ある歌唱。

フンディンクは格調高い声。


そうそう。ルミューのフリッカは今まで聞いた中では一番若かったと思うが、最も誇り高く威厳があった。山の神が浮気者の放蕩亭主を絞りまくるシーンなのに、美しく優雅かつ気高い歌唱。これはヴォータンでなくとも圧倒されるわ。




休憩中劇場の脇を通ったらブリュンヒルデが練習している声が聞こえてた。